螺旋常連からくり剣豪 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
衛宮士郎の導き出した“正義の味方”
主人公衛宮士郎が、かつて世界を動かした英雄たちを選ばれた7人の人間……マスターが使役し、勝者の願いを叶えるとされる聖杯を巡って殺し合う聖戦……聖杯戦争に巻き込まれ、激戦の渦中で自分の目指す正義とは何なのかを葛藤していく。
前の時系列を描いたZeroは聖杯戦争に参加した全キャラにスポットを当てましたが、この作品は衛宮士郎が前作主人公、衛宮切嗣に影響されて抱いた正義感の中で揺らぎ、戦いを通じて自分の答えを導く、というのを、衛宮士郎ととある人物との因縁を軸に終始描いたものであり、Zeroとは着眼点から違うように思いました。
三本あるルートの一つをアニメ化したこの作品は衛宮士郎の心理描写に重点を置き、彼の心情の遷移を丁寧に描写しています。
衛宮士郎の目指す正義感は最初こそよくあるヒーロー願望に見えましたが、話が進んでいくと彼に同行する遠坂凛がドン引きするくらいの異常性があらわになっていきます。
その辺りから彼の思想について、自己犠牲を厭わない愚者だとする側面が強調されるようになります。
挙句、終盤にある人物からその在り方を全否定され、平和をも乱す危険因子だとして殺害されそうになりますが、衛宮は開き直り、傲慢にも自分の掲げた意志を貫く姿勢には潔さすら感じさせました。最初から最後まで自分の意志を自分で否定しなかったのは凄まじかったです。
戦闘描写や士郎周りの心理描写、作画は秀逸です。戦闘描写はテーマ上少ないながらものめり込ませるだけのクオリティがあり必見。全部通してかっこいいですね。作画もごく一部ミスがあるものの、目立って崩壊した箇所は無く安定していました。
反面、Zeroで活躍した言峰綺礼が呆気なくやられたり、義兄妹である士郎とイリヤの間柄があまり掘り下げられなかったり、あとは間桐桜が空気だったりといった点が不満ではありました。これはルートによってキャラの扱いが大きく異なるので、短所と言っていいかは疑問ではありますが。
兎にも角にも、Fateシリーズを観るなら絶対に観るべき作品の一つとして、わたしは強く薦めます。