しんちゃん さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
芸術にがむしゃらに向かっていく、青春。
原作未読。
成績は優秀だけど日々をテキトーに生きているだけの不良、矢口八虎が絵画に目覚め、東京藝大の絵画科を目指す話。
主人公をはじめ、声優陣はそれほど有名でもない人たちをたくさん起用して、ストーリーと演出で直球勝負に出た作品という印象だったが、結果から言えば「大成功」だったと思う。
特に、吉田玲子さんの脚本が秀逸だった。
「絵を描く」という、高度に抽象的で非言語的な営みに挑む高校生たちの心情や、入学試験が近づくにつれて高まっていく、息の詰まるような緊張感が、主人公のモノローグを通じて巧みに表現されていた。特に後半は毎回緊張感MAXなところで話が終わるので、次週が待ち遠しかったし、最終話の入試最終日のシーンはカタルシスがすごくて、主人公といっしょに思わず涙がこぼれた。
もちろん、八虎役の峯田さんはじめ、声優陣はすごく良い演技をしていたので、それも高評価のポイントだ。トランスジェンダー女子のユカ役に花守さんを充てたのも、良かったと思う。そして、声優陣の演技に作画が負けてなかったのもすごかった。
また、OPとEDにはあえてセルではなく油彩や水彩タッチのカットを挿入したりと、作画もていねいで素晴らしかった。
音楽も、OP・EDともすごく良い曲で、今期のNo.1だったと思う。ただ、劇伴にところどころ人の声を使った現代音楽っぽいサウンドを使っていたが、(芸術の話だからと使ったのだろうけれど)少し耳障りであまり良くなかったかも。
ただ、トータルで見ればシリアスなストーリー展開が続くにもかかわらず緊張感が途切れない演出が奏功して、完成度の高い作品になったと思う。
以下は、ストーリーに関する感想。
{netabare}
思うに、この「入試編」のストーリーの軸は、ど素人だった高2からいきなり美術部に入り、藝大を目指すことにした八虎と、「絵を描く以外自分には何もない」というコンプレックスに苛まれてきたライバル、世田介との対称的な関係性だった。
最初はトランスジェンダーのヒロインとの絡みが軸なのか?とも思っていたが、そしてもちろんユカと八虎が2次試験の直前に小田原の海を見に行く展開の部分は2次試験における八虎のメンタルを支える大きな出来事だったのも事実なのだが、自分が思っていたほどユカと八虎の絡みというのはこの物語の主軸ではなかったのが、少し肩すかしだった。
トランスジェンダーの人物を(ギャグではなくシリアス展開の中で)メインキャラにしたアニメというのは非常に珍しいと思うので、ユカにはもう少し重要な立ち位置でストーリーに絡んでほしかったのだけれど、彼女の家庭の問題とか葛藤といったものがあまり深掘りされないままに1クールが終わってしまったのは残念。
八虎とは「腐れ縁」と称するユカが、藝大入学後の八虎の人生にもいろんなかたちでかかわる展開になることを期待したい。2期が楽しみ。
{/netabare}