薄雪草 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
憂鬱のハカリカタ
北高入学の初日。
ありきたりな緊張と、相変わらずの憂鬱のさなかに、私は乗り込んだ。
そして、たまたま前の座席にいた男の子の背中を一瞥している。
全く面白みが感じられない凡庸な挨拶。
これといってかわり映えのしない風貌。
取り柄にも差し障りにもならない性格。
あだ名は、"キョン" とでもしておこう。
でも・・・。
なぜだか私に興味があるみたいで、何やかやと声をかけてくる。
不思議と私の話に耳を傾け、そうかそうかとうなずいてくれる。
こういう展開が高校生活の始まりだとしたら、私のアピールも強ち間違ってなかったってこと?
取り留めのないやり取りも、推し量っていたタイミングも、ついに巡りがやって来たってこと?
キョン、だったわよね?
この人となら、古びた退屈から抜け出せるかもしれない。
あなたとなら、新しい世界を創り出せるのかもしれない。
私に託されたSOS団のカタチが見えてくるのかもしれない。
ねぇ? キョン!
そう思うでしょ!? キョン!!
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聴くところによると、成績は上位で、運動も万能だとか。
文化芸術に秀でていて、好奇心なぞは常軌を逸しているらしい。
おまけに行動力は一気呵成で、「全然と罰金」で事をまとめる横暴さも持ち合わせている。
そしてルックスは、なかなか・・・ではないか?
とまぁ、世界にも類い稀なるバイタリティ女子が、なぜか俺の後ろの席にいるというわけだ。
そんな奴が、どうして俺みたいな地味野郎なんかに突っかかる?
それにだ。
そんな女子に、どうして俺なんかが気を取られてしまうんだ?
それこそ意味が分からないってもんだ。
俺は、退屈さえ楽しく過ごせる毎日が、それこそ似つかわしい。
ハルヒなんぞに振り回される自分の憂鬱を、憐れみのSOSで慰めているというのに。
しかし、どうやらそれが俺の北高ライフのスタートらしい。
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青春譚を地で行くような目まぐるしさ。
2人揃っての憂鬱も少し認められる。
文芸部という私に似合いの居場所。
本好きなポーズなら、むやみに話しかけられないだろうし、余計な関わりを持たずに済む。
万一、踏み込まれても、思念体を対極に置けばいい。
そうすれば
私は私を振る舞える。らしくいられる・・・。
部室のムードが、いつしか私に関心を持たせた。
"あなた" としか呼べない私を、私はすこし悔しく思った。
"涼宮ハルヒ" としか言えない私は、どこかに鬱屈があった。
私にも、憂鬱が認められた。
でも、私は気づかなかった。
気づけなかった。
私のSOSに、気づいてもらえなかった。
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白と黒の2次元の世界から、彩りにあふれた4次元の世界へ。
禁則事項の連発は、私なりの下級生への心配りです。
危なっかしくて見てられないけれど、見守ってあげることしかできない。
それはちょっぴり、憂鬱でもありました。
キョン君にはお近づきになれたけれど、涼宮さんの方がいくらか早かったものね。
目には見えないかもしれないけれど、高校にも社会にもヒエラルキーはあって、それを決めるのは出会いのタイミングなんです。
駆け出しの今は分からなくてもいいけど、振り返られる年齢になった時に、みんなの時間が輝いていたことが分かります。
だから、お節介しすぎっていうのは、割と禁則事項が多いんです。
だって、曇らせてしまうでしょ。
涼宮さんのSOSの想いを。
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機関のエージェントですか?
そうですね。そういうのもいいかもしれません。
僕は "わけあり" の転校生ですから。
まさか、涼宮さんに目を付けられるとは思いもよりませんでしたが、楽しければ僕は構わないんです。
ちょっと僕は目立ってしまうみたいなので、皆さんが周りにいてくれると安心できるのです。
ええ、行く高校を間違えてしまったようです。
憂鬱だったんですよ。ですから、決断は早かったです。
一度しかない高校生活なんですから、どんな手を使っても替わるべきだと思ったんです。
SOS団ですか?
ええ。もちろん僕にぴったりだと思います。
こういう同好会が、全国の高校にあると、救われる方たちが増えると思いますよ。
大人の世界は大人になったときに考えればいいのです。
ですから、今だけはSOS団にどこまでも関わらせていただきたいのです。
きっと、機関?にも伝えられることがいっぱいできるでしょう。
だとすると、涼宮さんには、僕のSOSをキャッチしていただいたのかもしれません。
受け入れてくださった皆さんには、感謝するばかりです。
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キョン君、ハルヒさん、有希さん、みくるさん、古泉君。
5人は、心の友だちです。
「憂鬱なだけの毎日なんて、まっぴらごめん!」
そう、元気づけてくれる、わたしの楽しい仲間です。