フリ-クス さんの感想・評価
3.3
物語 : 2.5
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
いやいや、これもはやカルトだよね?
みんな大好き『ゾンビランドサガ』の第二期ですね。
一期を見ていない方は丸ごと置いてけぼりなので、
未視聴の方は、まずそちらをご覧になることを強くお勧めいたします。
で、本編の話をする前に、
作品の中でも登場する『自然災害』について触れたいと思います。
実際の被害に遭われ、トラウマのある方がおられるかも知れませんので、
ネタバレで隠しておきますね。
{netabare}
2011年3月11日、あの東日本大震災が起こりました。
死者1万5899人、重軽傷者6157人、届出があった行方不明者2526人、
住宅の全壊・家屋流失12万1992戸、半壊28万2920戸、全半焼297戸という、
昭和以降では未曽有の大災害です。
テレビに続々と映される映像だけでも戦慄を覚えるほどの衝撃でしたが、
その後知り合った、実際に救難活動へ行った自衛隊員の方によれば、
現地は「とても語れない、映せない、まさに地獄絵図」だったそうです。
まるで救いのない、あまりにも悲惨な災害でした。
そんななか、偶然仕事で気仙沼にいたお笑い芸人のサンドイッチマンが、
現地でテレビカメラを向けられた時に
いまの段階で『お笑い』にできることは何もないと思うんで……
芸人ではなく一人の人間として、できることをやりたいと思います。
と、悲壮な表情で語っていたのが印象に残っています。
宮城県出身だった僕の部下も、
何人かの知り合いと連絡がとれなくなったそうです。
でも、そういうの俺だけじゃないっすから。
みんなそうっすから。
そう言って力なく笑う彼に、僕はかけるべき言葉を持ちえませんでした。
{/netabare}
さて、本作は第一期の正統な続編であります。
前期の成功に気を良くして長期シリーズ化を狙っているみたいですね。
オリジナル作品というのは、
① 原作者や出版社からのチャチャがなく自由に作れる。
② 原作者印税がなく利幅が大きい。
③ タイアップやメディアミックスを自分で主導できる。
など、あたれば旨味のある企画ものなので、育てたいのは当然かなと。
前期『目も当てられなかった』3DCGも、
スケジュールに余裕があったことにも助けられたのか、
多少は『マシ』と呼べるレベルにまで改善されています。
ただ、前期の『リベンジ』と評価するほど劇的な変化はありません。
正視に耐えないレベルだったのが
イラっとさせられる程度にまで進化した、という感じ。
(回によってはやっぱ正視に耐えませんが)
てか、本気で育てたいんなら手書きでやれよ手書きで。
で、映像に伴って物語もパワーアップしたのかというと
う~~~ん……
半分ぐらいは「これ、ゾンビ関係なくね?」というお話だしなあ……。
う~~~~~~ん……ちょっとまあ……キレが……アレかなあ。
最終回とか、なに言ってんのかちょっとわかんないし……う~~~ん……。
あまりにも回によっての波が激しすぎるので、
とりあえず順番にレビュ-させていただきますね。
第一話 グッドモーニングリターンズ SAGA
{netabare}
借金まみれになったフランシュシュが、バイトしつつライブに出るお話。
話そのものは、ゾンビランドサガらしいグダグダ感が楽しいです。
食品工場社歌をうたう愛がめっちゃかわいい。
ただ、最後のCGは相変わらずのためいきレベル。
てか、このハコ・客層にこの曲で、こういう反応はウソだよなあ。
{/netabare}
第二話 ぶっ壊れかけのレディオ SAGA
{netabare}
フランシュシュがラジオ番組を持つお話。ゾンビ関係ありません。
強烈な昭和臭に好き嫌いがわかれるかも。
ホワイト竜は昭和の遺物・パロとして苦笑いできるにしても、
それに絡むサキの言動は、むかしのヤンマガかよって感じでちょっとアレです。
ステージのMCなんか、まんまアタマ悪いヤンキーじゃん。
歌唱シ-ンはピンのアップを2Dでちょこちょこ書いてたりして、
努力の跡がうかがえます。
MA大変だったのはわかるけど、3Dに貼り付けた手書きの目、ずれてんぞ。
{/netabare}
第三話 愛と青春のアコースティック SAGA
第四話 純情エレクトリック SAGA
{netabare}
愛がライバルに引き抜かれそうになるお話。ゾンビ関係ありません。
なんというか、めっちゃ普通のアイドルもの。
(純子がギターぶっこわすシ-ンはかっこよかったけど。)
CGはドラムの再現に力入れてたけど、努力すべきはそこじゃない。
ベースより弦の太いエレキなんか初めて見た。しっかりせいよ。
{/netabare}
第五話 リトルパラッポ SAGA
{netabare}
リリィがTVオーディションに出る話。ゾンビ関係ありません。
お話自体は、これもよくある芸能もの。
リリィ役の田中美海さんがけっこう器用なのは発見かも。
歌唱シ-ンはピンなので2Dを多用。
その分、応援席や舞台袖を何度も映し、枚数抑えてます。
{/netabare}
第六話 ウォーキング・ベット SAGA
{netabare}
三石琴乃さん大活躍の回。ああ、やっとゾンビらしくなった。
お話自体は安定のおバカさ加減、ようやく借金返済でめでたしめでたし。
ただし、この回は3D以前の問題として作画がヤバいかも。
作監に八人もクレジットされてるし、止め画多いし、
狂ったスケジュールを力技で押し切った感がありありと出ています。
{/netabare}
第七話 マイマイレボリューション SAGA
{netabare}
こちらも王道ゾンビ回。さらにゲストキャラで花澤香菜さん登場。
お話自体は、らしさ全開のぶっ飛び仕様で、面白いの一言。
ただ、前回に引き続き、いや、前回以上に作画がかなりヤバいかも。
せっかく脚本がいいのに、惜しいです。
3DCGは前期の使い回しかな? 正直、目も当てられません。
{/netabare}
第八話 佐賀事変 其ノ壱
第九話 佐賀事変 其ノ弐
{netabare}
ゆうぎりねえさんの過去編。明治時代で、ゾンビ関係ありません。
脚本も作画もしっかりしていて、今ク-ル最良のできかも。
(少なくとも僕は一番好きです)
しっとり、だけどピリピリした時代の空気感がよく描けています。
バーのマスターの素性がわかり、物語も大きく前進。
驚かされたのは、歌唱シ-ンがかなり『見られる』ものだったこと。
ロングは基本3D、アップに手書きを差し込んでるんだけど、
これまであった『違和感』が、かなり抑え込まれています。
もちろん、アラを探せばキリがないれど、
このクオリティなら特段の問題はナシ、他の回はいったいなんなんだ。
{/netabare}
第十話 ゾンビたちはどう復讐するのか SAGA
{netabare}
一年前のライブ失敗と、リベンジライブやるぞ~というお話。ゾンビ関係ありません。
このあたりから話が荒唐無稽というか、おかしな方向へ。
まず、地域密着型アイドルが二万五千のハコを埋めるのが無理筋です。
佐賀県の人口って80万人ちょいなんですよ?
人口比でいうなら、880万人の大阪府でローカルアイドルが27万人集めるのと同じことかと。
まあ、それは「アニメだから」で飲み込むしかありません。
で、フランシュシュの正体を知った雑誌記者が出てきて、
幸太郎に「私利私欲のため死者にアイドル活動させてる」と詰め寄ります。
いったいなんでそんな理解になった?
ていうか、競艇で大穴あてるまで大赤字だったよね?
これ、後で「誤解が解けて協力者になる」という安っぽい演出のために、
無理やり誤解させているだけです。
ラノベじゃないんだから、こういう『プロットありき』はやめてくんなまし。
{/netabare}
第十一話 たとえば君がいるだけで SAGA
{netabare}
大水害で住処をなくしたフランシュシュが避難所に入り、
子どもたちの相手したりしてるうちに、やっぱライブやる、となる話。
ゾンビであることは、ちょこっとだけ関係あるかな。
それよりも、話がだんだんおかしな方向へ。
避難所で子どもたちに歌ってあげるのは、まあ、いいことです。
だけど、それとライブを強行するのは別の話では。
この状況だからこそやるべきだ、
いまの佐賀に必要なのはお前たちの歌う姿だ、
幸太郎はそう言い切っちゃうけど、まだインフラ復旧のメドすら立ってないわけで。
佐賀全体がインフラまでマヒするような大災害ということは、
生活基盤だけでなく、愛する家族や友人を失った方も大勢いるわけです。
そういう方々が心休まらない避難所生活をしているなかで、
やるべきことのトップがそれってどうなんだろう?
あちこち避難所をめぐって子どもたちと遊んであげるならわかるんですけど。
{/netabare}
第十二話 史上最大の SAGA
{netabare}
ライブ強行回。ゾンビ関係ないどころか、ほとんどカルト領域かも。
アイドルライブのため会場周辺のインフラ復旧を急がせてって……
それはもうはっきりと『優先順位が違う』だろ。
復旧のためのリソースには限りがあるわけで、
スタジアムにそれを割けば、避難生活が長引く人が出るわけです。
支援金集めるためのチャリティなら他県でやれよ、と。
それに賛同する編集者も大手新聞も、アタマおかしいだろ。
ラジオで語るサキの言葉も、言ってることは自分の感情の押し付け。
冒頭で紹介したサンドイッチマンの言葉と比較して、
なんと独りよがりで被災者のことを考えていないことか。
避難所からスタジアムまで歩いていく途中、
人気のない荒涼とした被災地を眺めてなにも感じないのかな、と。
そして会場に続々と大観衆が押し寄せてきて、
次々と過去の登場人物が協力したと美談で語られます。
いやいや、チャリティなんだから、
現地に来られるなら出てやれよ、アイアンフリル。
さらに、海外からも復興援助の申し出がって……
被災して20日も経ってからアイドルに便乗すんなよ。ありがたいけど。
ヘリのアナウンサ―は「これはまるで壮大なサーガですっ」て……
なに言ってんだコイツは。
県庁もホントにスタジアム周辺のインフラ復旧を急がせちゃってるしね。
県知事や取り巻きも会場に来ちゃったりしてるし。
それでええんか? 佐賀県行政。
で、ライブ開催。
ド派手な演出、熱狂する観客。
打ち振られるペンライト。
同時刻、その気になれば歩いていけるような県内各所には、
家に帰ることもできず、
支給された毛布にくるまって不安な夜を過ごす大勢の被災者が。
いやいやいやいや、シュール過ぎるだろ。
CGもステージ演出もひどいとは思うけれど、
それ以前にやってることが、まるで『アイドルカルト』じゃん。
マンガ映画にムキになんなよ、とか言われちゃえば、
まあそれはまったくそのとおりなんだけれど、
少なくとも僕は、なんかやっぱり素直に楽しめないなあ……と。
{/netabare}
というわけで、僕的なおすすめ度は前期よりやや落ち、Bランクです。
前期から引き続きキャラは立ってるし、
OP・EDの楽曲もすごく楽しい。
ゆうぎり回みたいに、出来のいい回はごく出来がいいし、
過去から繋がる『謎』が少しずつ解き明かされて、興味もそそられます。
だけど、なんか変にアイドルアニメっぽくなったというか、
前期の『ゾンビ=シュール』みたいな面白みが影を潜めちゃって、
むしろアイドル特有のカルトっぽさが出てきたみたいな。
正直、他のアニメみたく無理に『美談』にしようとして、
逆に『あざとさ』が漂っちゃったりしています。
このアニメの魅力って、そういうんじゃないと思うんだけどな。
そうは言っても、次につながる強烈な『引き』で終わったこともあり、
三期があったら必ず見ると思います。
なんちゃらセブンみたいに「オレの歌を聞け~~っ」的な展開になったらどうしようかしら。