ひろたん さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
1秒前の自分と今の自分がどうして同じ人間だとわかるか?
このタイトルの問いに対して、この作品では、こう答えています。
記憶の連続性だけをたよりに一貫した自己同一性と言う幻想を作り出している、と。
幻想、つまり、自分は自分であるというのは思い込みであると言うことです。
この作品は、このことを様々な演出(仕掛け)で実体験させてくれて面白いです。
主人公は、歌うことが好きで上京し、アイドルをしている女性です。
しかし、売れないB級アイドルのため、会社の方針で女優に転身します。
ただ、本人は、心のどこかでは歌を続けたいと思っていました。
女優の仕事はとてもハードで、主人公は、精神的に追い詰められていきます。
そして、あることがきっかけで自分の中のもう一人の自分が顔を出してきます。
つまり、この物語は、仮面(ペルソナ)の話です。
今の自分は、本物の自分なのか、それとも仮面をつけている自分なのかです。
はたして今、女優として役を演じている自分は、本物の自分なのか?
実は、女優を演じている自分であり、本物の自分は他にいるのではないか?
心のどこかにしまったはずのもう一人の自分が独り歩きしているのではないか?
主人公は、どんどん自分が分からくなっていきます。
それに呼応するかのように、主人公のまわりでは、次々に殺人事件も起きてきます。
当然、主人公自身も巻き込まれていきます。
そんな中で、主人公は、さらに記憶が曖昧になっていきます。
これは、夢なのか、現実なのか。
この記憶は、事実なのか?
これは、自分がやったことなのか、他人がやったことなのか?
主人公の精神崩壊にあわせて、これらの境界線がどんどん曖昧になっていきます。
また、これでもかって言う演出(仕掛け)の数々は、視聴者をも欺いてきます。
たった今、自分が観ていたシーンの記憶が曖昧になってくるのです。
自分は、今、だれが、どこで、なにをやっていたシーンを見ていたのかと・・・。
次々に仕掛けに翻弄されていきます。
この作品の仕掛けとは、記憶の連続性を意図的に遮断することです。
主人公は、精神崩壊によって記憶の連続性が壊されます。
これにより、自分は自分であるという幻想が打ち砕かれます。
視聴者は、独特な演出によって記憶の連続性が壊されます。
これにより、主人公と視聴者は、完全にシンクロした状態にさせられます。
これで準備が整いました。
そして、いよいよ主人公の中にいる二人の自分の生存競争が始まるのです。
それは、どちらが本物かをかけた必死の戦いです。
もちろん視聴者自身もその中に否応なく巻き込まれていくのです。
この作品は、サイコホラーなので、恐怖を心理的にうったえかけてきます。
しかも、R-15指定だけあって、内容的には結構エグいです。
でも、最後はスカッとする終わり方なので救われます。
キャラデザにクセがあるのは難点ですが、話はとても面白かったです。
このような作品は、なかなか無いので観ても損は無いと思います。