nyaro さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
押井作品旧作の焼き直しですかね。面白いですが…素子はどこ?
攻殻機動隊はもともとサイバーパンクとして、ゴースト(魂)、集合的無意識、電脳空間における人間の可能性、オリジナルの無い模倣(シミュラクル)、認識の不確実性などを扱ってきました。
本作に至って今度はリアルとバーチャルがシームレスになったということでしょうか。または人間の形をしていることの意味と人間であることの無意味さ、みたいな話になっていました。つまり電脳空間の世界のみならず、形としての人間が実社会でも虚構性を帯びてきたとき(あるいは人形が現実性を得たとき)、人間をどう定義すればよいのか、という問いかけだったのかもしれません。
犬は人間に対して拠り所となる確かなもの、ということでしょうか。トグサが子供を抱き、子供が人形を抱いていた場面で、バトーは犬を抱いていました。この時の人形=子供の無機物性虚構性が強調されていた気がしたのは気のせいでしょうか。
言いたい事はそんなところかなあという気がします。押井守なのでよくわかりませんが。
ストーリーについて。草薙素子が出てきてサイバーポリスとして電脳空間で縦横無尽にハッキングを繰り返し、ガンアクション、カーアクションがバンバンでて、タチコマがギャグを飛ばす…というのを期待して見たので、初回はたぶん30分くらいで切りましたね。
ただ、あまりに評価が高いので再視聴したら、面白かったです。つまり従来型の攻殻機動隊を期待するとがっかりですが、そうでないことを知っているといい出来だということでしょう。
舞台はなぜか香港…なんでしょうね。ただ日本のヤクザもいて訳が分かりません。あの工業団地みたいなところが何を指しているのかも不明です。で、いきなり中華版ディズニーパレードですからね。非現実性を強調しているのはわかりますが。
アニメについては、CGは技術の問題なのか演出の問題なのか、FFとかバイオハザードとかそういう感じです。虚構性というか無機的な感じが出したかったんでしょうか。というかクーロンズゲートそのまま?
でまあ、本作の位置付けですね。深いかと言われると、うーん、テーマ性はいいんですけどね。テーマのオリジナリティですよね。時代背景でいうと先進的だったかもしれませんが、AIと生命、VRと現実みたいなことはいろんな作品で言っています。
天使の卵とかビューティフルドリーマー、パトレーバ―2なんかの焼き直しといえば焼き直しですし。
冒頭のあのロボットの動きとかデザインとかが斬新だったですけど、それ以降はなあ。さっき挙げたゲームや旧押井作品以上のものではないし。
普通、磊磊落落(小さいことにこだわらない)ですけど落落磊磊と言っていたのはなぜ?
あと格言みたいな言い回しが多すぎですが、これはどういうことでしょう。しょせん人間の意思疎通は誰かの言葉を借りている的な構造主義の話のメタファでしょうか。よくわかりません。
ということで、面白いしテーマ性もあるので見る価値はあると思います。ただ、エンタメ性が不足しています。エンタメ性は難しいところで、文学になり切って天使の卵になってしまうとセールスになりませんし…だからといって攻殻機動隊の名前を使ってこれではなあ…と。
もちろん攻殻機動隊はアニメに関して言えば押井作品のようなものなので、名前を借りて無茶をしたという感じはありませんが…やっぱり、アニメでテーマ性を語るのにエンタメが置いてけぼりになるのは、あまり好きでは無いですね。押井守はエンタメ性の中に深いテーマがいれられませんかね。