「サカサマのパテマ(アニメ映画)」

総合得点
69.7
感想・評価
663
棚に入れた
3144
ランキング
1750
★★★★☆ 3.8 (663)
物語
3.9
作画
4.0
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.7

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ネタバレ

ひろたん さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

二人の引力が弱く感じるのは、お互いの重力が反対方向を向いているからですか?

この物語は、少年のエイジが少女のパテマに出会うボーイミーツガールです。
当然の流れとして、二人は惹かれあいます。
しかし、私は、最初、なぜ二人は惹かれあったのかが分からなかったのです・・・。
二人の引力が弱く感じるのは、お互いの重力が反対方向を向いているからですか?
そんなふうに揶揄したくもなりました。


この物語は、重力の方向が逆向きの2つの世界が繋がるところが舞台となります。
2つの世界は行き来することが可能です。
しかし、もう一方の世界へ行っても自分の重力の方向は変わりません。
つまり、エイジの世界に行ったパテマは、ひたすら空に向かって落ちていくのです。
そんなパテマを手でつかまえて救ったのがエイジでした。
でもそれだけでは、二人がそこまで惹かれあう理由としては弱い気がします。


話は少しそれますが、私は高いところが苦手です。
崖など、手すりが無くてちょっとでも高いところは足がすくんでしまいます。
しゃがみ込んで、とにかく何かにしがみつきたくなります。
そうかと言って、高所恐怖症ってわけでもなさそうです。
手すりさえあれば、がぜん大丈夫なんです。
明石海峡大橋の塔頂ツアーも行くし、遊園地のバンジージャンプだってします。
この違いは何かと考えてみました。
もちろんそれは死ぬかもしれない恐怖心です。
裏を返せば、絶対死なないことが分かっていれば大丈夫です。

話を戻します。
この作品は、落ちることへの恐怖をとても良く描けています。
「うわっ、こわっ」って思います。観ていて、背中がゾクっとします。
その時、思い出すのは「とにかくに何かにしがみつきたくなる」ことです。
つまり、そう言うことです。
パテマは、この世界にきてから、ひたすら怖かったんです。
でもしがみつけるエイジがいてくれたおかげでなんとかなったんです。
しかし、この作品は、この空に向かって落ちることの怖さを最初は明かしません。
つまり、これはパテマの気持ちで、最初はそれを視聴者に伏せていたのです。
そして、ここぞと言う時に明かして一気に感情移入させてきます。
このあたりの脚本は上手いなと思いました。
でも、まだパテマとエイジが上手く繋がらないのです。何かが弱いのです。


二人は、今まで、サカサマで手を繋いで困難を乗り切ってきました。
しかし、中盤の盛り上がりでは、二人はサカサマで抱き合って困難を乗り切ります。
これ以降、二人は命を懸けて助け合う仲に発展していきます。
それを象徴するかのように二人はサカサマのまま抱き合って行動を共にします。
でも、やはり何かが描き足りていない気がするのです。

その答えは、エンディング曲の歌詞にありました。

♪「"逆さまに響く"ふたつの鼓動
  ひとつ ひとつ 言葉をかわし
  ひとつ ふたつ 心を寄せた 」

きっと逆さまに抱き合った二人は、お互いの鼓動を聞いていたはずです。
そして、お互いの鼓動を聞きながら、言葉を交わしていくんです。
こうやって文章にすると、男女のとても強い絆とエロティシズムすら感じます。
それだけ二人は親密な仲だったので、惹かれ合うのは必然ですよね。

しかし、私は、この歌詞を見るまでは、ここまで二人は深いとは思いませんでした。
いや、むしろ物語の中では、そこまでは描き切れていなかったのではと思います。
私としては、二人の絆や愛を深める過程をもう少し丁寧に描いてほしかった。
そうすれば、もう少し感情移入できて二人をもっと応援できたのになと思うのです。


この物語の「サカサマ」の世界観は、とても斬新ですばらしいと思います。
この世界観なら「ラピュタ」をオマージュしなくてもよかったのにと思いました。
なぜなら、十分オリジナリティを出せる要素を持った世界観だったと思うからです。
また、最後のオチは、最初から気づいてしまうのも残念なところです。
もう少し巧妙に隠してもらえると最後にサプライズになって面白かったと思います。

この作品で、パテマの「落ちる」怖さを一緒に体験してみるのは、お勧めです。

投稿 : 2021/11/20
閲覧 : 317
サンキュー:

24

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