nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
無限と死と年上のおねえさん。少年の日の好奇心の物語でした。
ハードSFだとは思いませんでした。そして非常に…いや滅茶苦茶面白かったです。
ペンギンは陰陽で太極図のイメージですね。つまり森羅万象そして万物の生成と消滅です。
まず、テーマ性が素晴らしかったです。
子供の抽象概念の芽生えですね。10歳から12歳くらいのころでしょうか。そのころ多くの人が、宇宙がいつから始まっていつ終わるのだろう、どこに境があるのだろうと想像すると思います。数字の始まりと終わりとか直線の終わりとか悩んだ記憶があると思います。
同時にそこから発展して、人は死んだらどうなるんだろうという疑問と、どう考えても無になるしかないという結論。寝たら永久に起きないという感覚が想像できない。
これは恐怖であると同時に好奇心の芽生えでした。終わりが無い、あるいは自分の意識が無くなってしまう。ゼロと無限の恐怖と答えを知りたいと思うもどかしいほどの欲求。
その子供の疑問に対する答え、トポロジー的に閉じた宇宙というのでしょうか。宇宙も時間も円環である。それが太極なのでしょう。宇宙論は行き着くところは哲学でもあります。子供のころ答えが出せなかった、宇宙とは何か死とは何かについて、本作では明確な答えは出していませんが、もう一度考えるきっかけになると思います。
おっぱい…は母性とか生命力とか理屈はつきますが…。
また、同時に「科学する心」を持つ少年少女。好奇心が芽生え、何でも調べたい。分解したい。分析したい。それに対する大人の取るべき態度や、取ってはいけない態度が描かれていました。頭がいい子供の思考と感情のアンバランスなども良く描かれていたと思います。
森の中の探検。あの柵で覆われた鉄塔とかコンクリの壁とかなんというかありし日の匂いまで思い出します。
{netabare} そしてなんといっても少年の日の「隣のおねえさん」への憧れとの別れですね。本作では隣ではなかったですが、少年の日に優しくしてもらった年上の女性というのはかなり人生に影響を与えるものです。その雰囲気も良く描かれていました。
ストーリーそのものは、雰囲気からして筑波学園都市なんでしょうか。子供がチェスやってるとか、みんな研究熱心ですもんね。相対性理論を読んでいるとかそんな感じですね。
空間に空いた穴を修復する役割をもった「おねえさん」が、地球でみたペンギンの姿をした修復機を使って穴をふさぐ役割だったということでしょう。ジャバウォックは「おねえさん」がもっと地球にいたいという願いが生み出したためらいでしょうね。
「おねえさん」そのものは実在の人物で意識だけ宇宙人?というか異質な意識が乗り移った感じでしょうか。引っ越ししていたのは、おねえさんの元の人に戻った感じ?その人の海の記憶とジャバウォッグの記憶が影響したということかもしれません。
海はぱっと見で、映画スフィアですね。抽象的な意思を映像化すると似たような形になるのでしょう。球体は完全無欠の塊であり、海は生命の源ですからね。
少年はペンギンの謎を解きました。つまり、研究の先にいるおねえさんに再び会えると思うか、少年の日の思い出で終わるのか。ここはじっくり味わえばいいと思います。
そうそう、ハマモトはあの感じだとスズキとくっついたんですかね?アオヤマは後悔しないといいんですが。 {/netabare}
面白さについては、発想といい、SF設定といい、キャラたちドラマといい、最高でした。本当に面白いです。こんなに主人公の少年に感情移入できる作品も珍しいです。