蒼い✨️ さんの感想・評価
2.3
物語 : 2.0
作画 : 2.0
声優 : 2.5
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
遺憾な出来。
【概要】
アニメーション制作:ライデンフィルム
2021年1月4日 - 3月22日に放映された全12話のTVアニメ。
原作はGA文庫(SBクリエイティブ)のライトノベルで原作者は、サトウとシオ。
監督は、migmi。
【あらすじ】
辺境の平和な村、コンロンの少年のロイド・ベラドンナは、
物語で読んだ軍人に憧れているのだが、
王都の軍人になりたいという夢を村で最も弱いことから村人の皆から反対されていた。
ロイドの決心は固く、村長に断りを入れて村から出た行き先は大陸の南端のアザミ王国の王都。
村長の弟子である“イーストサイドの魔女”と呼ばれるマリーの同居人になることに。
軍人になるには士官学校の入学試験を受けなければならなかったのだが、ロイドは知らなかった。
コンロン村の実態は、古の英雄達が世界を救った後に世俗を離れ安らぎを求めた集落。
村民の全員が英雄の末裔で伝説級の猛者で、世界の厄災や魔王を人知れず食い止めている。
そこでは最弱で自分に自信が無いものの、世間から見れば自分が規格外の超人であることを。
この物語は、小さな英雄ロイドの勘違いと、彼に振り回される周囲とのギャップで綴られていく、
それで世界を救っちゃうかも知れないコメディなのである。
【感想】
原作は一応は異世界転生モノではないですし、なろう小説でもないです。
最新話まで目を通しました漫画版は、実はそんなに嫌いではないです。
内容は、少年漫画では昔からある、
無垢な怪力美少女アンドロイドを主役とした古典的なコメディ的な話で、
人間の少年を主人公にしてのおねショタやら、
なろう小説の『またオレ何かやっちゃいました?』な話に味付けされた感じ。
なので、女性キャラが多いのですが彼女らをどうこうといった話ではなくて、
このアニメのヒロイン枠は主人公のロイド少年であり、
無自覚に無双する主人公を面白がり、ひたすら彼を愛でるアニメなのかな。
この手のアニメはストーリー云々よりキャラの魅力が大事なのですが、
個人的には推しキャラができるとはまで行かなくて、
見てて感情が動かなかったですね。
制作会社のライデンフィルムは、2021年の1月-3月は、
『異世界ピクニック』『オルタンシア・サーガ』『はたらく細胞BLACK』
も合わせて4作品同時期放送のためか、アニメの作りが雑。
なお、第2話にクレジットされた作画監督が24人である事実と、
クオリティの低さに、いろいろと察せられますね。
脚本は、話を面白くするためでなくて原作の要約とカットが目的の再構成で出来ていて、
例えば、士官学校の学生たち・冒険者・群衆などといったモブの登場を極力減らして、
アニメーターが楽をするための話の改変が常套手段。そのために脇役やモブなどの、
心の描写のドラマが浅くなったり丸ごと削除されています。
ギャグアニメなのに話の途中経過の面白い部分を無くして結末につなげたり、
作中で一番笑えたギャグがアニメではカットされていたり、
原作のエピソードの消化ノルマをこなせればいいという纏め方で、
原作が名作でないにせよ、アニメでは話が劣化しています。
その上に、演出も面白くもない。
例えば、漫画ではコンロン村の付近に棲息する一角ウサギは体高が5メートル以上で、
それを以て、ロイド少年の育った環境の異常さ、常識の噛み合わなさが一目でわかるのですが、
アニメの一話冒頭でロイド少年が狩ろうとして苦戦したウサギは普通サイズというふうに、
自分を卑下している彼の常識がおかしいという話の説得力を映像で持たせるのを放棄していますね。
一話途中で、王都で巨大なイナゴのモンスターが出てくるのですが、
漫画では大きな顎で獣を噛み砕いて口から動物の血を流しながらの禍々しい登場に対して、
アニメは単純に大きなイナゴが出てきて少女を襲っては主人公に殴り倒されて投げ飛ばされるのみ。
どうやったらモンスターが強そうに怖そうに見えるかで危機感を煽ることへのこだわりが皆無で、
良い映像を作ろうという意志が見えず、単に仕事だからと作業で適当にやった感がありあり。
人間キャラも、女性キャラが全く可愛く見えないなどキャラデザが良くないだけではなくて、
ショックで目玉が飛び出るなど30年前のアニメみたいなギャグ表現が多かったり、
全体的にまばたきが極端に少なかったり、表情でキャラの喜怒哀楽の心を魅せようという意図が無し。
例えばホテルでの話では、気まずさと照れ隠しに相手の目を見られずに視線をそらしてしまう、
そこからキャラの本当の心を知る…みたいな芝居が見受けられるシーンが漫画ではあるのですが、
アニメは動画であるにも関わらず芝居に無頓着で、ありふれたカットで口で思いを説明する。
凄い作画を見せろとまでは言いませんが、絵で芝居をさせるセンスが無さ過ぎるのと、
絵コンテの指示どおりでしょうが、作画で楽をしようとする妥協の産物が随所に見受けられて、
単純にアニメーションとしてつまらないのですよ。
それは、最終回の展開すらも原作通りにやったらアニメーターの負担が大きいためか、
作画の都合で主人公らが相手にしている敵ゴーレムを一体に減らしたり、
背後でモブとモンスターの集団戦をやってるはずが、
何故か数が激減している上に全く動いてなかったり、
これどうなってるの?ってスタッフに尋ねたくなります。
更にひどいのは最終回が13人の作画監督と、原画マン38人+プロダクション表記2社と、
大人数を費やしても手抜きで、この程度しか動かせなかったという事実。
クレジット人数の多さは動かしたりするクオリティを保証するものではなくて、
現場が回って無くて人海戦術で間に合わせるための悪あがきという例のひとつですね。
ロイド少年が夜空を飛んで、宇宙空間に近い大気圏限界近くの大陸上空から綺麗な夜明けを見て、
彼の住む世界が丸い惑星であることを体験するという、原作の挿絵にも漫画版にもある名シーン(?)
がこのアニメでも最終回の見せ場になれるはずが、これも当然のようにカット。
原作愛が無くてここまで適当な作りとなると、このアニメに好感を持つことは不可能ですね。
一言で感想を言えば“ショボいアニメ”で雑というか手抜きに見えてしまうのですが、
低予算でそれ相応なのかと、手癖で作ってしまうスタッフの質の問題があるのでしょうかね。
もしこれで本気で全力ならば、
アニメ業界のスタッフの質が必ずしもプロレベルで当たり前というのは、
実際に働いている人達から見れば要求が高過ぎるのか、
しっかり出来てる会社は貴重であると言わざるを得ませんね。
ともあれ、こうした妥協まみれで雑に作られるアニメは、
原作が可哀相だなと思わざるを得ませんでした。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。