螺旋常連からくり剣豪 さんの感想・評価
2.8
物語 : 1.5
作画 : 3.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
倫理以前に人間ドラマがかなり荒削り。無理に原作全ての話を13話に収めた弊害か
大体スーパーカブと同じことが言えるアニメでした。
JK拾った云々が犯罪なのでは、という話は作品を根幹から否定することになってしまうので割愛します。
この作品もスーパーカブ同様、いかにもキャラクターが作られた感じの造形となっており、脚本の都合で動かされている印象が強かったです。それに加え、いくらなんでもそうはならんやろ、な展開が多過ぎて感動ドラマとして見るにはあまりに欠点だらけかと。
問題点はキャラクターの動かし方でしょう。そのせいで変な方向に話が脱線するし、キャラクターに変な印象を抱きがち。
沙優に散々なことをしたクズ男の矢口の急な善人化や、基本蚊帳の外な後藤、三島と主人公吉田の三角関係からなる本筋から外れた中途半端なラブコメなど、そもそも必要が無かったり、また沙優の母や矢口、沙優の友達を虐めた連中といった不快なキャラが罰を受けなかったりなどの謎展開をするので、それらの腑に落ちない点が炎上問題以前にノイズになって話に入り込み難い。
ひぐらしみたいに罪を赦すにしろ、描写が致命的に欠けているのが微妙なところ(特に沙優の学校絡み)。
サブヒロインである後藤、三島はあまり必要の無いキャラだと考えています。
本筋に絡んだことといえば葛藤する沙優を諭したくらいで、後は前述のハーレム展開の舞台装置にしかなっていないですし、三島からの伏線らしき吉田への発言もそこまで活きた形跡が無い。
矢口についても沙優がいきなり彼に気を許すのが謎。矢口とした性行為自体は沙優の落ち度もありますが、吉田の家で矢口が沙優を襲った時のあれはれっきとした犯罪行為。彼自身どうしようもない下衆な性格だったし、彼の突然の改心も含めて話の切り替わりが急過ぎて首を傾げずにはいられませんでした。
しかもそんな彼が吉田に正論を言ってしまう始末。吉田も覚悟を決めたはずなのになぜか言い淀んでいるしで、吉田は間違っていることをしているという認識を飲み込んでなお、堂々としてもらいたかったです。
沙優の兄貴と沙優の関係も奇妙。
沙優が家出したなら、まず母とは別居している兄が匿えばいいし、妹を大事に思っている癖に最低限の金だけ与えて放任は無責任にも程がある。結果沙優はどこの馬とも知れない赤の他人に体を汚された訳ですし。
沙優も沙優で兄に吉田との出会い以前にそんな大変な目に遭ったことを話さない。二人きりで車で話す機会があったのに話さないのはいくらなんでも不自然極まりないです。
沙優の母と吉田のやり取りも引っ掛かる。結局母親が譲歩したみたいな形で終わってしまい、なんとも煮え切らない締まり方でした。
この時、吉田は母親である彼女以外に沙優を守れないと言いますが、ここまでの惨状になってなおそりが合わない以上、沙優が母と無理に付き合うのは不幸でしかないでしょうし、それなら母よりも沙優を理解してくれる兄と過ごす方が幸せになれるはず。
現に実の家族に由来する虐待だってあるわけですし、そのせいで取り返しのつかない結果になることもあります。ゆえに必ずしも吉田が言っていたような、実の家族と過ごすことが正解とは限りません。
人生経験をそれなりに積み重ねた社会人の吉田がそこに気付かないはずがないとは思いますが。
総評して看過できないツッコミどころが多く、ヒューマンドラマとして楽しむにはやや厳しい作品。
スーパーカブもそうですけど、この手の作品はある程度のリアリティが欲しいところ。どっちつかずで中途半端過ぎます。