逢駆 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
~胡馬北風~
旅は出で立つ前が最も楽しく
犬は鳴き声だけが最も怖く
女は後ろ姿が最も美しいものでありんす―――――
中世ヨーロッパを思わせる世界を舞台に、狼と商人の道中で起こる様々な事件を描いた「剣も魔法もない」ファンタジー物語。
作品全体に漂う素朴で幻想的な世界観に惹きこまれ、物語の雰囲気だけで酔わせてくれる秀作でした。
商人ならではの静かで熱い駆け引きやバトルが本作の主軸。そこに、行商人・ロレンスと賢狼・ホロが旅路で繰り広げる独特で洒落た会話劇や、二人の恋愛模様がうまくスパイスとして混ぜられていました。
このスパイスの比率が高く経済の話もそこまで難しいものではないので、商人話に興味がないという方にも純愛物語として楽しめる作品だと思います。
本作は主人公とヒロインが織り成す言葉遊びをふんだんに使った掛け合いがとても魅力的でした!
まず主人公のロレンス。一年のうちの殆どを荷馬車で過ごす青年行商人。主人公として出過ぎず出なさ過ぎず、色の濃いヒロインとうまくバランスのとれた人物でした。
そしてなんといっても自称賢き狼であるヒロインの少女・ホロ。彼女がうまく物語に色を添えていました。
一人称は「わっち」。「ありんす」や「くりゃれ」といった、いわゆる花魁詞を使う珍しいキャラクター。男を翻弄させるような巧みな話術や仕草に老獪さが加わって、神とは思えないふてぶてしい性格。それとは裏腹に可愛い声や容姿、時折見せる子供っぽさ。
そのギャップが彼女の艶っぽさを際立たせていて癖になる魅力がありました。
本作はそんな奇妙な組み合わせの二人を愛でるアニメと言ってもいいです。
童話的な世界観と少し変わった登場人物。
派手な物語が好きな方には物足りないかもしれませんが、物語をじっくり味わいたい方には最適。
甘くもホロ苦い、ビターテイストな作品に仕上がっています!