蒼い✨️ さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
悠木碧でなければ切ってた。
【概要】
アニメーション制作:ミルパンセ
2021年1月8日 - 7月3日に放映された全24話のTVアニメ。
原作は、「小説家になろう」に連載していたweb小説を改訂し、
カドカワBOOKSから刊行されている馬場翁によるライトノベル。
原作イラストは、輝竜司が担当。
webサイト『ヤングエースUP』にて、漫画家・かかし朝浩によるコミカライズ版が連載中。
監督は、板垣伸。
【あらすじ】
すべての生物がスキルやステータスといったゲーム的なシステムで管理されている世界。
人族と魔族が幾度も争ってきたのだが、その世界で放たれた勇者と魔王の大魔法が、
両者を死滅しただけでなくて次元の壁を超えて、日本のとある高校の教室をも襲った。
古文の授業中だった生徒25人と教師は全員即死して、前世の記憶を持ったまま異世界転生。
ほとんどが人間として新たな生を受けるのだが、転生者の一人が卵から孵化したのは、
体長1メートル蜘蛛のモンスターで前世は女子高校生の「私」(主人公)だった。
「私」の転生後は、世界最大の迷宮「エルロー大迷宮」で母蜘蛛から生まれた、
何百匹もの蜘蛛の共食いを含めた過酷な生き残り競争から始まった。
負ければ死んで食われる境遇で「私」は、他の蜘蛛には無い人間の知性でスキルを使って、
モンスターを倒して食うことで何度も何度も死にかけながらも生きながらえる日々。
新たなスキルを習得したりレベルアップすることで最弱から這い上がっていく。
この頃の「私」は、まだ知らなかった。
この世界のルールの「禁忌」を犯して強くなるごとに、
自分自身が世界の真実に近づいていっていることに。
【感想】
なろうで飛ばし飛ばし読んで、漫画版は更新をチェックして読んでる程度の浅い読者です。
この作品名でgoogle検索をすると、
「ひどい」「作画崩壊」などがサジェストワードに検出されますね。
どのアニメでもですが、ネガティブなワードをネットで辿っていきますと、
まとめサイトに行き当たりますね。この手のサイトは閲覧数を稼ぐために、
挑発的な記事タイトルをつけますし、対立煽りが常套手段。
まとめ民は作品の人気やクオリティとは無関係にクリエイターに敬意を払わずに、
粗探しをしては価値を貶めようとゴミのように作品を扱いますし、
その暴言などを真に受けて、「あ!このアニメは酷いんだ!叩いて良いんだ!」と、
安直な思考で同調して叩きに回る人もいれば、
叩かれた作品のファンが釣られて喧嘩になったりしています。
少しでも付け入る隙があると思えば「溺れた犬は棒で叩け」の精神が強い方々ですし、
そういった悪意に混じって操られることが、そのサイトの管理人の広告収入に繋がるので、
見に行かない、相手にしないほうが良いです。
なので、目にした時にそっと閉じました。
なお、作品アンチが過剰に集まるまとめサイトを以て、「本当のことを言ってる」と喜んだり、
それを賛否両論の根拠とするには分母のサンプルが偏りすぎてはないか?と思うのです。
一部のサイトで盛大にぶっ叩かれているこの作品にしても、5点満点の3.1~3.5で、
数値としては高くはなくて苦言を呈されているものの低過ぎもない凡庸な作品というところです。
作品の反響についても冷静にサンプルを集めることと、
やはり自分の目で作品を観て内容を確認することが一番大事ですね。
前置きは終わりまして、作品の話に入ります。
人間から蜘蛛に転生してしまって、
絶望で自殺してもおかしくない境遇をめげずに図太く生き抜く蜘蛛子さん。
命がけで倒したモンスターを食べては、食後の骨や肉などの残骸を見せますし、
冷静に考えますと絵面が相当に酷いアニメなのですが、
そこは、主演の悠木碧さんの一人芝居に近い喋りの陽気さで、
とんでもないけど笑えるという範疇に抑えられていますね。
その悠木碧さんがED曲を非常識なテンポの速さで歌いあげていて、
本当にすごい人だなと感心してしまいます。
圧倒的弱者から始まった蜘蛛子さんは、
『韋駄天』という転生者ボーナススキルを初期から持っていますので、
格上の強者な化け物たちを相手に神回避で致命傷を避けてギリギリ生き延びていて、
攻撃力と防御力が低いものの、戦略を立てて毒で状態異常を与えて倒す。
彼女がレベルアップしてはさらなる強敵に挑むの繰り返しは、
ゲーム実況動画の面白さに似ていて、楽しむことができました。
蜘蛛子さんの迷宮攻略とは別に勇者パートがありまして、
そっちは話もキャラも薄いのと、悪役となった転生者に振り回される展開が続いて、
後の展開を考えると話の構成として必要ではありますが、
それ自身が面白みに欠けていたのも否定はできませんね。
蜘蛛子さんの戦いと成長が中心で評判が悪くもない前半(1クール目)は、
百瀬祐一郎という小説家が構成を手掛けていて、
板垣氏が監督を引き受けた時にはすでに1クール目の構成が出来上がっていたそうです。
それが原作者の馬場翁氏が構成を手掛けた後半(2クール目)では、
ラストの展開が意味不明にならないためにも勇者パートを多く扱わないといけない問題と、
蜘蛛子パートと勇者パートの時間軸のズレのネタバラシを前提とした物語の構成が、
わかりづらかったという意見がありまして、
それらを遥かに超える欠点として作画のクオリティの低さをボロカスに叩かれていますね。
・元々2社の共同制作の予定が、もう一方のアニメ会社が逃げて単独制作になった。
・にもかかわらず先に放送枠を買ってしまっていたためか、
2クール連続で広報済なのを製作委員会が撤回しなかった。
・制作会社ミルパンセは弱小で単独では連続2クールを無難に完成させる能力がない。
・なので想定の半分の戦力で忙殺されてスケジュール不足で作業をしたが、
発注した中国の下請けのカットが酷すぎて、
本社の修正作業(作画監督補佐に監督らがクレジットされてるのはそのため)
が追いつかずに最終回を一週間延期する羽目になった。
監督のブログなどの情報を総合すると、原因はこんな感じですかね。
監督は責任をとるのも仕事で言い訳はダメ!というのも一理あります。
ただ、大手のマッドハウスですら「オーバーロード」の2期と3期では、
無理なスケジュールを強行して質を落としていたのを見るに、
実は角川案件では制作現場がしわ寄せを食らう問題は、
ありがちなことではないでしょうか?
1クールのアニメをゼロスタートで作ると2年前に始動が相場だと言われていますが、
21年1月開始の2クールアニメの監督のオファーを19年夏に監督に振ってきたことから、
角川の出した条件でこの企画を引き受ける会社が他にはなくて、
クオリティは度外視で納期と予算重視のミルパンセに仕事が回ってきた。
・仕事では度々各所に無茶振りを強いる角川。
・悪条件を引き受けることで角川の信用を維持しているミルパンセ。
・ミルパンセの従業員の規模が足りていなくてクオリティに支障が生じる問題。
企画を立て、予算とスケジュールを組み、その中で出来るだけ良いものを作り、
利益を出すために広告戦略を練るのがプロデューサーの仕事なのですが、
プロデューサーによる調整がうまくいってなかったなどの製作委員会の不手際と、
実力不足の会社で制作を強行してしまった問題の合体技でクオリティ度外視になってしまい、
分割2クールで余裕を持って作業を出来ていたならばまだマシになっていたのに、
それすら許されない状況で、ご覧の通りの結果を招いたようですね。
とはいえ業界の事情なんて視聴者からみれば、「知ったことか!」であります。
ミルパンセは失敗したという事実は覆せませんし、作画への批判は仕方ないですね。
と、こんな感じで、自分としてはアニメの内容よりも何故そうなったに興味が行ってしまう、
なかなかに困ってしまう作品(それに食いついてしまう自分もな)でした。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。