薄雪草 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
探究する目的。(青春への再評価)。
絵は、一途に自分を写す鑑。
表わしたいのは、自己の化身。
拘りたいのは、可能性への鍵。
描き込んで、描き直して、描き破る。
突きかため、衝きかため、活きかためる。
骨の髄の、その髄まで打ち込む。
脳の髄の、その髄まで絞り出す。
海の底にもそれが欲しい。
空の彼方にもそれを見つけたい。
時間の限りにもそれは手放せない。
感性を構図に磨いていく。
個性を絵の具に固めていく。
生きる目的をカンバスに探究する。
たまらなく懐かしく、息を詰めて、胸を疼かせています。
(6話まで )
観終わりました。
美術(絵画)と大学受験とを紐づけて、八虎たちが何を考え、どうやって行動するのかを、真っ向勝負で見せてくれる作品でした。
私なりには、視聴に居住まいを正しながら、鑑賞は爽やかさをもって終えることができました。
まるで、作品それ自体が、ひとつの絵を描き出していたかのようにも味わうことができました。
絵に近づこうとすれば(自分を高めようとすれば)、競う相手は外にも内にも顔をのぞかせてきます。
彼らとの対峙は、手元には何のとりえもなく、足元もおぼつかなく、まるきりビハインドからのスタートです。
なにげに描いた素描をたどりゆけば、ピカソやゴッホのような巨匠が頭に浮かんできますが、最初の足がかりは美術部です。
身近な先輩や同期の友人の作品との出会いが、合理的な思考性ではない "ファンタジスタの領域" を開門させます。
中庸を振る舞う八虎ですが、根っからの士気の強さに後押しされ、進むべき道を思い描くようになりました。
彼が、ずぶの素人だったこともあり、顧問先生や予備校講師の語り口がわかりやすく解説を兼ねていて、視聴する側との距離感をうまく縮めてくれました。
彼らとの対話は、おどおどとしながらも若々しく、刺々しく向かいあう姿も描かれますが、内実を吐き出せば真摯なさまのままです。
受験ですから結果が全てです。でもそれは点数化できない、順位のつけようのない「結果」です。
技法はもとより、テーマ性、思想性なども問われるだろうそれは、一般的な大学入試とは色合いの違う、芸術系ならではの面白さ(難しさ?)が垣間見られました。
全体を通して、みずみずしい緊張感が保たれていたことも、飽きずに観られたファクターだと感に入りました。
まさに「ブルーピリオド=青春を絵筆にかける時限領域」です。
それにしても、よくぞ描いてくれたと私はひそかに悦にひたっています。
あの渋谷を、青の心象で切り取った八虎の感性。
受験というマッチレースをくぐってきた者にしてみると、彼らの物語の先を知りたくなります。
ティーンエイジャーは、はち切れんばかりのエネルギーを放出しながらも、なお持て余すのが常。
言うならそれも "ブルーピリオド=海図のない航海" 。
深い霧に包まれて、 "メランコリーな堂々巡り" に囚われている船長、なんてことも、ままありがちです。
身の内に北極星を見つけ出し、太陽として抉りだすのも、避けては通れない必然性。
それもまた "ブルーピリオド=可能性への点描" らしくって?
あの渋谷を(私の住む町を)、真っ青に見えていた若い感性が、確かにあったはずと気づかせ、蘇らせてくれた "ブルーピリオド" 。
まるで、ルネッサンスを迎えたような気分です。
とっても素敵な作品でした。