nyaro さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
喪失感で苦しむのになぜか見てしまう。サブカル史における存在感が凄いです。
夏になると、というか本当は夏の終わりに見たくなるアニメです。あまりにしんどいので毎年見ているわけでは無いです。前回は21年の10月に視聴して本サイトでレビューしていました。
23年の7月。今年はもう大丈夫かなと思ってみましたが、やっぱり駄目でした。泣くというより喪失感が凄いです。
設定とか考察とか話の流れはいろんなサイトにあるし、本作について私はそこに興味はないです。大切なのは、この作品がなぜ胸を打つのか、なぜ何かを失う苦しみを追体験したくなるのかですね。
ゼロ年代が生み出した孤立や孤独。そういう気分を端的に表していたからかもしれません。せめて何かとつながっていたい。でも、無理だという諦め。だから泣くしか無かったのかもしれません。
つながろうとすると必ず失う苦しみがある。その人間として生まれてきてしまうことで必然的に背負ってしまう、という事実が人間の脳にインプットされているからかもしれません。
あるいは、ひょっとしたら、人類はもう駄目かもしれない、という気分を2005年の段階で我々は無意識に気が付いていたのかなと思う事もあります。人間はバラバラになって行く。今の少子化や戦争のアナロジー…いや雰囲気を強く感じます。最後の翼人って、なんかそういう意味にも取れます。
感動ポルノといえば感動ポルノなんですけど、なぜ千年前を見せたのか。最後はなぜカラスの視点になるのか、を考えるとそれだけじゃないですよね。人を好きにならないとつながらない生命の業と喪失の苦しみがセットになっているからなんでしょうか。
とにかく、心の深いところの触りたくないところをグッっとやられた感じです。
以前のレビューでは、時代の気分で、疲れていたから泣きたかったのかも、泣いて浄化されることを欲していたのかも、と書きました。それも当たっている気もするし、的外れな気もします。
成長神話が崩れて、生きることに意味を見出すためには、せめてどこかで誰かとつながっていたい。でも繋がれない。せめて羽になって空に浮かんで自由に生きたいとか。達観ではなく諦めの境地のような気もします。
とにかく分かりません。わからないけど見てしまう。もはや泣かないですけどね。泣かないですけど…という作品です。
それと音楽と映像がやっぱりすごいなあと思います。そして作品全体ですけど、この時代のアニメには力があったと思います。
実は最近になって、本作のエロゲを何とかやってみたんですけど、エロパートはアダルトという名目であるためで、全然エロくなかったです。
で、ゲームをやることで、この作品を夢中になってやっていた人たちの脳みそをトレースしたかったんですけど、よくわかりませんでした。最後のほうとかほとんど一直線だし。やっぱり時代性なんでしょうか。あ、ただ、選択のしようがなく、喪失に向かって進むしかないという絶望感があった気はします。
いろんな文化人の意見をたどったりしましたが、今のアニメ・ゲームからは想像もつかないほどの思い入れでした。
そして、ゲームをやって改めてアニメの出来の良さにビックリしました。感情が動くポイントの掴み方がものすごく丁寧に作られている気がしました。
21年10月の評価は4.1ですが、23年7月に4.5にあげました。アニメ史というよりサブカル史における、本作の作品としての存在感は評価以上にあると思います。