テングタケ さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
劇場版の前後編を通しての感想です。
テレビ版は観ていません。
地球上に最後に残された人類未踏の秘境、謎の大穴に挑む少年少女の冒険譚、とあらすじを聞くだけでワクワクしてきませんか?
違うんですよ。彼女らがやってるのは冒険ではありません。ただの無謀な自殺行為です。
上昇負荷のことは置いておくとしても、アビスの内部には腐海のように巨大肉食生物がはびこり、装備の整った訓練された大人の探検隊ですらも生きては帰っては来れない、非常に危険な場所なんですよ。
それを少年少女(一人はロボですが)が二人きりで大した装備もなく挑む、そんなのは勇気とは呼べんなあです。
例えるなら、ヒラリーが登頂に成功する以前にエベレストに単独無酸素登頂を挑むようなものです。
案の定、主人公は後編でモンスターに毒を食らって瀕死になります。言わんこっちゃない。とにかく主人公の女の子には一切共感できませんでした。
大人の探窟隊にメンバーの一員として参加して、何かの事故で単独で潜らざるを得なくなった、とかだったらずっと面白くなったでしょう。
ところで、レビューを読むと「泣いた」と言っている人が結構多くいました。泣くようなシーンあったかな?
変異した異形の化物を安楽死させるところかな?
直前でウサミミが止めに入ったので、「ああ残念な展開かな」と思ったんですが、見事本懐を果たしてホッとしました。劇場で見たら拍手していたかも。
そこは悲しいシーンじゃなくて、喜ぶべきシーンですよ。
怪物は永遠の命=永遠の苦痛、を背負わされています。
尊厳死こそが、彼女に対する最大の優しさであり敬意なんです。
私は永遠というものにものすごく恐怖を感じます。
永遠に幻影と戦い続ける戸愚呂兄、死にたくても死ねないカーズ様、永遠に死に続けるディアボロ、火の鳥の主人公、etc.
想像しただけで底知れない恐怖に陥りませんか?
ルパンの「感謝しろよマモー、やっと死ねるんだぜ」というセリフに私は大いに共感します。
残酷で無慈悲な永遠の苦痛から抜け出すことができたことは、救い以外の何物でもありません。
このストーリー自体がグロい本作で、唯一ホッコリ出来た瞬間でした。