nyaro さんの感想・評価
3.6
物語 : 2.5
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
アフターエヴァのアニメの停滞を象徴する作品だと思います。
いかにエヴァンゲリオンの影響が日本アニメに与えた影響が大きいかがわかる作品でしょう。言い方は悪いですがその最高に悪しき例が本作だと思います。
マグリットの「大家族」が最終回に出てきたときはどうしようかと思いました。電車や電話、テレビといった心理=夢辞典的なギミックをばらまき、個人的因縁で人を殺し合う。ニライカナイは何のためだよ、音楽の意味は?調律って?オリンとかなんとか意味がわかりません。それはそうです。意味が解らないことが大事なわけです。エヴァ、特に最終回が落としたくらい影です。
(エヴァで東方の三賢者をコンピュータの名前にするとかああいうギミックの使い方です)
エヴァ以降、敵の素性の開示や技術的科学的裏付けはなくても、それでいいとしてしまいました。
シンエヴァで明らかになったと思いますが、エヴァでやりたかったのは思想ではないと思います。14歳の少年の劣等感、家族、性欲と向き合おうとしたとは思いますが、それは哲学ではなくもっと経験的なストーリーで、決して形而上的でも哲学的でもありませんでした。スーパーオタクアニメです。
エヴァンゲリオンにありもしない思想を集合的無意識のようにクリエータたちがそこに「こうでなければならない」という「意味」を見出してしまったのかなあと。その端的なものが「世界系」だったと思います。
「ファフナー」「ラストエグザイル」「アクエリオン(これは脱しつつある過渡期?)」等々もこの考えが見え隠れしますが、本作がその端的な例と言えます。「ブレンパワード」「キングゲイナー」ですらその影響から逃れられていません。
その意味でいうと、エヴァンゲリオンがいかに日本のアニメまたは小説やマンガ、あるいは哲学思想まで含めどれだけの停滞を生み出したかわかりません(世界の中心で愛をさけぶ、的なものも含めて)。
ですので、アニメ史的にアフターエヴァの端的な腐敗例として、本作は記憶にとどめる必要があると思います。
のちに個人と世界的出来事の選択の問題として世界系は整理されて、上手に使える作品も登場しますが、それはストーリー論であって私は思想ではないと思います。2006年のハルヒで随分後遺症から脱して、2011年の東日本大震災でそれははっきりしたということだと思います。そこまでクリエータたちはエヴァ的手法(訳が分からない=難解=高尚)を世界系ととらえて抜け出せなかったのでしょう。
本作について話は面白くないとはいいません。SF的ではありますし、謎や因果関係も破綻はしていない感じです。いいキャラもいました。
ただ、ストーリーの考察はできても、テーマを考察しろといわれても、多分見つけられないでしょう。なぜかといえば、そんなものはないからです。そしてそれが当時の世界系の正体だったと思います。(本当の自分とか、あったかもしれない未来とかそういう意味付けはできるかもしれません)
作画はかなり綺麗です。演出も工夫していました。ただ、やっぱりどこかで見た画なんですよね。過去のいい演出を拾い集めたような印象はありました。
久遠とか女子はヒラメ顔ですが当時はやっていたのかもしれませんが可愛いです。また、多分クリエーターが太ももフェチだったのでしょう久遠の太ももは一見の価値があります。