nyaro さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
量子コンピュータ時代の人間の存在を描いたハードSF…なんですけど
アリシゼーションのテーマは茅場から託されたザ・シードによる新しい世界の創造が、結晶を用いた最新型の量子コンピュータと組み合わさることで、どうなって行くのか。また、アルゴリズムや深層学習ではなく、シミュレートからAIでどう発展してゆくか、異分子のキリトが入るということがどういう意味を持つのか、という部分が本筋となります。
SAOは今までオンラインの世界でのザ・シードの広がりで仮想の人間世界が拡張するところが中心でしたが、ハードウエアの進化を物語に導入したことで魂が生まれるのかという問題に踏み込んで行きます。
「ハローワールド」でも同じようなテーマがありました。あちらも量子コンピュータ内の世界の話になっています。つまりコンピュータの計算素子は現実空間における量子のようなもので、内部に生きている人間にとっては、実在の「世界」なわけです。そこは、単純なシミュレート空間ではなく「世界」なわけです。
魂というか人格をコピーしたときの問題がわかりやすく描かれています。これがSF的には非常に深い問題です。人間の電子的な転送や、記憶のコピーなどアイデンティティの同一性の問題を考える上で、生命倫理、哲学的にも一度は考えるべきポイントが物語に入っており、SF的に痺れる話でした。これを回避するために生まれたのが攻殻機動隊では「ゴースト」だったわけです。
脳医療と仮想空間の話はユウキの時に出ていましたし、SAOのトラウマの話はシノンの時に出ていました。これらの問題を再び上手く物語に内在させており、アリシゼーションはかなり面白い話になっています。
キリトという異分子が混入することで変わる世界が、まだ完結していない今のストーリーにつながっています。
心意は…うーん、唯一あまり好きじゃない設定ですね。アクセルワールドだけにしておけば…まあ、作者に何か構想があるのでしょう。
ただ、作者の性癖なのでしょう、とにかく冒険、特にバトルの部分が好きなのかその話が長いのがちょっと冗長感の原因になっているのは否めません。結果的に深いSF的テーマが視聴者に伝わらず、単純な俺TUEEEと取られているようですね。剣士の学校とかいい話なんですけど、あの塔を上ってゆくのが長かったかなあ。特に90階から上ですよね。
キリトはSAOの時代からNPCにすら感情移入できるという特徴が描かれています。AIが世界をシミュレートするというのも合わせ、私が好きな「ビートレス」に通じるところもあるし、茅場は攻殻機動隊の人形遣いか少佐ですよね。
SAOでは常に生きるとは何か、人格、魂…つまり電脳時代の人間とは何かが語られています。サイバーパンク時代からアップデートし、AI時代に対応したハードSFとしての要素をちゃんと持ってるのに、伝えきれていないのが本当にもったいないです。
といろいろ書きましたが、私はアリス様萌えなので、それだけでも大満足でした。