nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
演出と場面転換と構成が凄い。テーマもいい。最高に面白い映画でした。
映画はみんなで作るものだ、を否定した映画だと思います。初めはそういう雰囲気を出していましたが、結果的に映画は監督が何を見せたいか=監督が面白いと思うのはなにか?に収斂していきます。
リアリティの部分ですが、これはジーンが成功するのがご都合主義だという見方もできますが、何のために冒頭にニャカデミーショーの場面があったのか。それはジーンの成功物語ではなく、ジーンが成功したからクローズアップした、という風に見れます。
その裏にある数多の失敗例、夢破れた人は見せてないだけだ、という表現なのでしょう。
ジーンという名前はGENE、つまり遺伝子です。フィニは映画のラストの「完」ですね。映画の遺伝子を受け継ぎ、映画の本質を理解し、物語を提供できる人という意味だと思います。ポンポさんと祖父が出てくる、フィルムからデジタルの場面はそういう意味もあるのでしょう。
銀行のシーンはもうちょっとナタリーに尺を取ってくれたらなあという気もしましたが、しかし、ここは受け取り方ですね。ポンポさんが我儘をきいたのも頭取がOKしたのもジーンの情熱です。結局は、みんなの力を集めるには、映画を作りたいという一人の男がいるかどうかです。
映画のためにすべてを切り捨てるという「編集」と「人生」と「劇中劇の主役」を重ねる。そして、アリアは感情、情熱です。それを描き切ったストーリーが素晴らしかった。
更に本作のもっともすごいのが、演出と場面転換、構成です。あるいはキャラの輪郭のピンクとかミドリの輪郭です。とにかく飽きない。面白い。ワクワクする。映画の内容そのものです。
美人の女優だけ出していればいいというのは古い映画の感覚です。「ローマの休日」だって、内容は少女マンガです。オードリーヘップバーンが出てるからいい。ブルックシールズ、ナタリーウッド、イングリッドバーグマン、マリリンモンロー。ポンポさんは女優ありきでしたが俳優も似たようなものです。
憧れの価値観は多様化してしまい、スターが不在になりましたが、美女を見たいと思う心はそれだけに純粋な感動につながります。古い考えゆえに一つの正しい考えでもあります。ポリコレ云々は本作では考えすぎかなあ。
スピルバーグ、ルーカス、コッポラ、リドリースコット、キャメロン、フィンチャー。みんな名作も撮りましたが、デビュー時はほとんどB級作品です。そうなると、ジーンくんは長い映画が好き、ニューシネマパラダイスが好きと言っていたので、おそらくシンドラーのリスト、地獄の黙示録、ファイトクラブなどの名作系に行くのでしょう。キャメロンみたいに結局「アバター2」かよというB級監督ではない気がします。
それと日本の作家やマンガ家、有名アニメ監督とかみんなその分野のスーパーオタクですからね。ルーカスやタランティーノもそうですね。本作のすべてを切り捨てろという主張は極端でもないと思います。むしろ、自然に切り捨ててきた人間が最高峰になるんだということですね。
正直言うと、この作品知名度は高いし評価は高いのが不思議です。なんか酷評されるような感じなのですが、意外なことに映画〇ムでも、4.0ありました。興行収入は1.6億円しかないと聞いてましたが…。
つまり、単純に面白い。そして浅く見てもテーマ性が分かる。更にこの映画の裏を自分で補完して創作というものを深掘りしてもいい。どの段階でも楽しめる映画ということでしょう。
サブスクに無料公開されたので、再視聴しましたが、再び夢中になってしまいました。10回以上は軽く見てるのに不思議です。
以前、視聴しながら15分単位くらい毎に感想を書きましたが、とりとめがないので全面書き換えしました。