芝生まじりの丘 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
無邪気さの生み出す楽しげな牢獄
宇野 常寛の「ゼロ年代の想像力」によれば、この作品の無限ループする夢世界という設定は、無条件に主人公を好いてくれる異性を用意し、苦しみを覆い隠し、無限に変わらない日常に閉じ込める、というオタク系ラブコメジャンル自体をメタファーしているのだという。
実際見た感想としては、そのようなメタファーが実際どの程度押井守の意図したものであるかは微妙かなと思う。
ただ、夢を叶えようという「無邪気さ」が歪な牢獄を生み出し、人々を閉じ込めてしまう、と捉えると、これはまあ確かに現代のオタク文化の流れに対する適切な表現であるような感じがする。
インモラルな創作などというのはアニメ以外にも世の中掃いて捨てるほどあるのだが今日のオタクコンテンツというものはインモラルなものが、途方もない無邪気な装いを帯びていて、作っている方も何やら清純なものを作っているかのような無邪気な面持ちをしているというのが非常に倒錯的なところだと思う。
アニメ自体の話をすると、とくに序盤のふうりんの演出だとか、さくら先生と温泉マークの夢に気づいていくシーンの現実と夢が交差するようなところが好みだった。
ただ、現代においては願望からループに閉じ込められるという筋立ては少し食傷気味の感もある。