蒼い✨️ さんの感想・評価
3.5
物語 : 2.5
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ピュアハートな物語ですか?
【概要】
アニメーション制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
2019年7月19日に公開された114分間の劇場版作品。
監督は、新海誠。
【あらすじ】
父親との関係悪化で家出をして、
伊豆諸島にある故郷の離島から東京の都心にやってきた高校一年生の森嶋帆高。
東京はいつも雨が降り続いていて、晴れることのない薄暗い空に覆われていた。
家出をした未成年の帆高をアルバイトでも雇ってくれるところはなく、
新宿のネットカフェで寝泊まりしているうちに所持金も尽きようとしていた。
帆高は、ハンバーガーチェーン店で腹をすかせていたところ、
そこれアルバイトをしていた天野陽菜と知り合ったり、
家出時のフェリーで縁を持ったオカルトルポライターのところで住み込みで働いたりする。
陽菜には不思議な能力があり、祈ると雨空に数時間の晴れ間を作ることができる。
帆高と陽菜は仲良くなって、晴れ女業者を立ち上げてネット広告を出すのだった。
【感想】
「君の名は。」から3年ぶりの新作の監督を務めた新海誠という人は、
他人の作った作品に素直に感動して賛辞の声を送ることができるのが、
人間としての美点なのかな。「聲の形」の将也の涙の表現が頭に残ってて、
それを帆高の号泣シーンの作る参考にしてみたりで、
映像作家として進化に貪欲なクリエイターであるとは思います。
いっぽうで新海氏は自分でよくオリジナル映画の脚本を書いたりもしているのですが、
・なにかの代償の呪いで消える(死ぬ)ヒロイン。
・悲劇性を高めるために前段階で日常描写に時間を割く。
・ヒロインが消えないハッピーエンドを求める主人公。
今回は、「AIR」「kanon」「CLANNAD」などでkeyによって散々使い古されたシナリオをより単純化。
新海誠氏にはエロゲ会社でOP映像を作ってきた職歴があったことからこそ、
その手の物語が美しくて価値のあるものであると、
感化されているのではないでしょうか?
その単純に文章化したら青臭さが強い筋書きを、
新海誠監督作品の武器である空を意識した演出と映像と音楽で目一杯盛り上げている。
絵作り・演出にかなり頼ってはいますが、その事自体は批判されることではないでしょうね。
例えば、「ドラえもん」の「のび太の結婚前夜」は何度も映像化されていますが、
登場人物の解釈、シナリオの再構成、作画など、それぞれの違いで別物となっていますね。
同じ原作・同じ内容でも作品を効果的に面白くもつまらなくもするのが演出であって、
映像コンテンツを作るアニメ制作会社がやりたいことを出来ないではなくやれるように、
作画や演出を磨く技術本位を志向するのは惰性でなければ至極あたり前のことなのです。
今回のお話のポイントは、帆高少年の心を理解して展開に納得できるか?でしょうか。
帆高少年が家出した経緯は殴られた顔以外の描写や説明が映画では一切ないですし、
生い立ち、家族構成や島の生活などの情報も皆無。
新海誠監督は視聴者各々の想像での補完に任せて感情移入させるために、
帆高少年のバックグラウンドをアニメでは敢えてやらなかったと言っています。
初めての都会への戸惑いと不安。冷たく怖い都会で人の心の優しさに触れた嬉しさ。
『何も知らないくせに!』と叫んで大人の理屈への反抗心。
好きな女の子一人への感情より大事なものは自分には存在しない。
敢えて説明を少なくして視聴者と帆高少年を同じ視野で世界を見せていることで、
それは映像の中の出来事を体験してるかのようであり、
ひとつひとつの情動のドラマがライブ感覚で扱われています。
それらをイチイチ肯定的に捉えれば、共感で帆高少年を応援する気になって、
物語に感動して泣けるでしょうし、
シンクロできなければ、迷惑な家出少年が感情のままに動いて、
彼にとっても好ましくない、例えば警察等を悪者にして、
それらの障害をぶちやぶって自分の願いを叶える。
ただ、それだけの話であると感じられてしまいますね。
尾崎豊の「15の夜」の歌詞みたいな、“若気の至り”のノリだけの展開に終始している作品ですので、
大人の理屈では、帆高少年の心や行動の幼さに?マークを入れたくなったり、
帆高少年の助けになる登場人物らが、「こうしたいからこうした」ではなくて、
ただ話の流れで動かされてると思える部分が多々ありますよね。
しょせん創作はファンタジーで作り物ですが、その突っ込みたくなる気持ちを、
映画を見ている間は忘れさせてくれるだけの話の力を自分は感じ取れなかったですね。
特に、常に気分だけで行動している帆高少年に関しては、
それを若さゆえのエネルギーで肯定して片付けるには、
癇癪を起こしやすくて無分別で身勝手な人格に基づいた犯罪行為が目立ち過ぎることから、
自分は帆高少年の気持ちや行動から共感や感動が得られなかったですし、
未熟な未成年であることを免罪符にしたような結末についても思うところがありました。
常に帆高少年に対しては冷めた観察者にしかなり得なかったことで、
このアニメに対してもそれなりの作品評価にしかならなかったのが正直なところでした。
多少シナリオに無理があっても演出の力で気にならなくなる作品も存在しますが、
これはそういうアニメではなかったですね。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。