TaXSe33187 さんの感想・評価
3.8
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
とっつきやすいSF風エンタメ
一挙配信で今更ながら視聴
AIの心やら人類との戦争など古典から現代まで描かれ続けているテーマの話
まぁ実際のところはエンタメに寄せている作品なので、設定面をチクチク突くような話ではない
正直なところ1話の時点では展開にも演出的にもあまり魅力を感じなかった
多分オンエア中に見ていたなら視聴の優先順位はかなり低かったかもしれない
ただ、この点は「テーマパークの片隅で歌う不出来なアンドロイド」って初期位置に由来する部分なので欠点ではない
綺麗な声で綺麗な顔立ちだけど大多数の人間の琴線には触れない、という立ち位置に沿った素直な表現
ここから主人公が成長していく過程を描かれる中で、1話との違いを感じられて没入できる要素になっている
粗筋単体で言えば「未来から来た相棒と一緒に災厄を防ぐ」っていうありがちな内容
活動の尺度が100年と長くなるため生身であればタイムトラベル的な手段を用意する点を、
主人公コンビが共にAIのため(相棒の)断続的なスリープという手段で解決している
{netabare}そして「スリープにより経過している状況に関与しない」というAI的な手段自体が終盤の急展開の説得的なギミックになっている{/netabare}
内容について
{netabare}「AIは一つの使命のために活動する」という根幹が最後まで、全ての状況に適用されている点が何より面白い
「このキャラの使命は何か」を前提に視聴できるため、短い出番のキャラクターでも行動の意味を理解しやすく印象に残りやすい
使命とそのための目標に冗長性があるvivy
局所的な問題解決に特化した使命のマツモト
この使命の違いが人間的な性格の違いとなり、互いに影響を受ける様子はバディものとしてシンプルな面白さがある
エンタメ的なライブ感とSF的な表現のバランスが良く、1話の地味さをしっかりと覆してくれた
そしてなによりタイムリープ的な解決手段を最低限のものとした点が個人的には一番好感を持てた
「何度も失敗してやりなおす」という過程自体を主軸に置いた作品ならともかく、
別の軸を持っている作品で「やり直し」が頻繁すると緊張感が薄れる
実例を出すのはアレだけど、「東京リベンジャーズ」の視聴を早々に止めたのがこの点
あの作品も「何度もやり直す」というのが根っこの軸なのはわかる
ただ、作者の描きたい軸が「とにかくヤンキーを描く」に終始してしまっている
そのせいで主人公の「やり直し」に対する明確な狙いが薄れてしまい、
トライ・アンド・エラーとしての魅力が消えてしまった
この作品の場合は(情報の)タイムリープが存在することを初期に提示しつつ、実行されるのは最初と最後のみになる
そして「使命を実行する」というAIの根幹があるため巻き戻した後に博士を見捨てる流れも自然な形で成立している
加えて未来から過去という一方向の流れのみのため、過去から未来に戻る展開にありがちな、
「改変後の未来の記憶はどの時点のものか」という問題も発生しない
「タイムリープは主軸じゃない」というのを最後まで徹底していたため、
これに纏わる問題点を発生させずに済んだのは大きなプラス
それでも終盤は駆け足感があったので、この辺りは演出や台詞で補足できる部分があれば印象も変わったかも
{/netabare}
作画に関しては日常・戦闘のメリハリがしっかり効いている
特にAIであることを強調するためのキャラアップのカットは綺麗で見ごたえがあった
演出は軽い感覚で視聴すると薄味に思えて描写不足に感じるかも
ただしちゃんと拾っていくと必要なシーンは一通り描かれているので、ここは個人の感覚次第かな
個人的に気になったのは音楽
基本的に良質で、終盤繰り返される歌は直前までのギャップもあってかなり上手い
ただ挿入歌・主題歌に関してはあまり印象に残らなかったかな
良い曲だし上手い人がちゃんと歌っているので悪印象はないけど、どうしてもサラッと流れるような感じ
AIが歌唱する透明感という意味では演出に一役買っていたのでプラスの評価だけど、単体としてはインパクトがあまりない
まぁここも個人による良し悪しの部分かな
1クールで話を綺麗に着地させたAIモノって意味ではかなり上質
ただし演出の透明感が強すぎて印象の弱さがややもったいないかな?ってのが総評