nyaro さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
少女たちは本当に生きていると言えるのか?
本作は感情移入の仕方が非常にむつかしい作品でした。少女たちは、死ぬ直前あるいは死にたいという状況から無理やり生を与えられ、過酷な任務と短い寿命という絶望的な状況の中で、それぞれが小さな喜びを見つけながら淡々と暮らしています。
この少女たちのエピソード一つ一つは健気さが切ないような悲しいようなほっこりなような味わいのある話でした。砂糖や星、本、犬などの小物を上手に使って少女たちは何を感じているんだろうと考えさせるような話になっていまいした。
ただ、もう少し視点を広げると少女たちの生きる理由は、薬物…なのか知りませんが刷り込みによるものです。この無理やり与えられた感情を考えると生きる意味というものを考えてしまいます。
無理にでも生かされて生きる目的を与えられるのがいいのか、尊厳をもって自分の生き方を選ぶのか。生命倫理にもつながる問題ですが、これを美化しては駄目だと思います。
公社側の倫理観の欠如は頻繁に描かれていましたが、やはり視点は少女たちに集まります。そのとき少女たちの生を肯定的にとらえていいのかですごく悩みました。無理に生かされても幸せに死んでゆければいいのか。あるがままを受け入れて悲惨であっても自分の選択を絶対とするのか。そう考えたとき、少女たちに感情移入してしまって良いかと考えてしまいました。
命令の絶対厳守、主人を守る反射的行動。まるでAIもののような設定です。AIものなら機械に生命は宿るかですが、本作の場合、薬と洗脳と医療技術によって生かされている彼女たちの魂はどこにあるのか、ですね。
アニメは作画もいいしキャラデザも少女たちの使命とのギャップを上手く表現していました。イタリアというイメージも良く再現できていましたし、根底を流れる死の匂い的な雰囲気を上手く表現していました。音楽がない時間も結構長くて効果的に使っていました。
ストーリーは最高に面白いです。まったく飽きません。一気見してもほとんどダレませんでした。
というわけで、少女たちの「現状」に着目するといい話という見方もできますが、少し視点を変えると本当に少女たちは生きていると言えるのかという疑問も生じました。
追記 ロボコップという映画があります。テーマ性でいうとロボコップの方が分かりやすく描いていますので、両方見るといろいろ考えられると思います。