nyaro さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
アニメ会社の習作?出来は非常にいいのですが、薄い感じでした。
進撃の巨人の構造そのままなのでちょっと調べてみたら、同じ制作会社でした。あまり歴史がない会社のようで、蒸気が出るような武器もアクションも、進撃の巨人で培った技術を使ってオリジナルを作ろうというコンセプトでしょうか。それでも、話としては単なる模倣ではなくエッセンスを拾って面白い話に仕上げたと思います。もともと進撃の巨人もゾンビものの亜流ですし。
テーマ性については、カバネリという存在の中間的な悲哀とか、ゾンビ物語における孤立と仲間が減ってゆく絶望とか、主人公との恋愛とか、家族とかいろいろ織り込んでいる割には深掘りが浅くて、考察するような内容ではありませんでした。
特に主人公が自身が倒すべき敵と人間との中間状態になったことに対するアイデンティティクライシスとか、正義の実践と周囲からの理解とかが、最後は恋愛に置き換わってしまった感じで、ストーリー運びは面白くできていましたが、深掘りが全然できていませんでした。
アニメについては、本当に綺麗だとは思います。抜くところは抜いていますが、止め絵や決め所をおさえてうまく仕上げたと思います。一見劇場版のクオリティーですが、結構やらかしているところが多い気がします。けん玉のシーンとかホヅミで酷い作画がありました。それをそう見せない技術が、Vivyにまでつながっていったのでしょう。
別にけなしているわけでなく、テレビ版のアニメ制作として本当に上手ですし、女性キャラの肌のピンクの入れ方や瞳や唇のウエット感、服装のカラーリング、背景美術などの工夫で、印象だけでレベルを1段も2段も上げて見せていいました。
ストーリーは、主人公の特異性から始まり、アイデンティティの変化、覚醒、戦いと旅立ち、新たな仲間、勝利、本当の敵の登場、裏切りから真の覚醒、大切な人を救いつつ敵を倒す。王道のストーリーですが、キャラの使い方が上手く面白いストーリーに仕上がっています。
ただ、出来がかなりいい本作が、語り継がれていないのは、テーマ性が弱いこと、キャラの深掘りが出来ていない、創作物として独自性のある新しい何かが提供できなかったことなど、アニメ会社が本格的に立ち上がるための「習作」のように見えてしまうことなどがあげられると思います。
(習作に見えるというのは、制作会社を調べるために見た情報からの印象なので作品から読み取れるわけではありません)
その美しい「印象」を残す技術をアニメ好きなら味わうのもいいですし、見て損する出来ではないです。暇つぶし以上の満足度もあると思います。ただ、まあ、歴史には残れない出来でした。