takumi@ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
恐怖感をあおる音と映像の演出が良かった
綾辻行人によるホラー・ミステリー・サスペンス小説が原作。
綾辻氏がALI PROJECTをお好みなのだそうで、
本作はALI PROJECTの世界観が色濃く投影されているのだそうだ。
舞台となるのは1998年のとある田舎町。
海外で仕事していて不在がちな父を持つ主人公・榊原恒一は
自身の病気療養のためもあって、亡き母の実家に身を寄せ
地元の中学校に転入。そこで次々起こる事件に巻き込まれていく、という話。
原作は5話進んだあたりで立ち読みしてしまい、
もともと結末から読む癖があるためラストはわかっていた。
でもアニメの音と映像の演出という最大の強みで、そこは充分楽しめた。
惨たらしいシーンのリアルで生々しい音。
恐怖感をあおるエレベーターやボイラー室の重低音。
階段を昇りながら近づいてくる足音。
ガラスが砕け散る音、傷口から噴き出したり、床に滴る血液の音。
身体に何かが刺さる音、燃え盛る炎の音や爆発音。
そして九官鳥の発する謎めいた言葉。
それから、恐怖感をあおる演出。
音と多少重複するけれど、明度を落とした赤や緑の背景や
不気味に美しすぎる夕焼け空、あえて時折挿入される球体間接人形の映像。
それから、クラスメイトの目配せや意味深な台詞、表情、口調。
そういったもので、ほとんど中盤以降まで引っ張りながら伏線を散りばめた。
そしてその音と演出こそが物語の根底にあるテーマを引き立てている。
{netabare}
でも、ハッキリ言って恐怖感を煽る演出は無視していたほうが
真相がつかみやすいのだけど、ミスリードには必要だったので仕方ないのだろうね。
なのでそれをミスリードと気づかないうちは、意味あるものとして
いくつもの情報が心に引っかかり、でも特に意味もないから明かされず、
消化不良を感じてしまう恐れはある。
{/netabare}
観る人によっては、ただただ怖がらせておいて、本当は何が言いたいのか、
現象の真相が何なのか、すごくモヤモヤしたまま次回にいくので
じれったさを感じる人も多いかもしれない。
キャラデザはどの人物もみんなかわいく綺麗。
作画も、光や影の使い方がすごく丁寧だったと思う。
そして音は、効果音だけじゃなく音楽のほうも雰囲気がマッチしていた。
これから何かが起こるであろう暗鬱な予感をもたらすOPも、
嵐の翌日の晴れやかな静けさを感じさせるEDも、とても好きだった。
無駄にバトルロワイヤルだったシーンには、いささか疑問が残るし、
人間の心というものの脆さ、人の愚かさをイヤというほど見せつけられ、
鬱な気分になる人もいそうなので、誰にでもお勧めできる作品ではないけれど、
眼帯をしたヒロイン・鳴ちゃんの冷静さの中に時折垣間見せる可愛さと、
クラスメイトである赤沢さんの、昔出会ったことがあるような
ツンデレぶりは個人的にけっこう楽しめていたかもしれない。
でも欲を言えば、後になって公開されたOVAの内容を見るに
本編に組み入れても良かったのではないかと。
鳴のミステリアスな感じを出すために控えていたのだろうけれど
1話の前の話を知っているほうが、よりいっそう感情移入しやすかったかも。
とりあえず、登場人物たちの服装なども細かく見ていると
「おやっ?」と何かに気づく人もいると思う。
なかなかに、細かく作り込まれていたよなと、視聴していた放送当時から
しばらく経った今、あらためて思う作品だ。