ひろたん さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
副館長のくくるに対するあだ名が、実は、この作品の最大のテーマだった
■ 2021.10.05 1クール目視聴済 ■
旧タイトル:過去(思い出)と未来(夢)が交錯する真ん中に現在(現実)がある
「思い出」を守るために「夢」がある。
しかし、目の前には避けられない「現実」がある。
閉館寸前の水族館を舞台に過去と未来を結ぶ今ここにある物語。
とても”夢”があるお話だと思いました。
「お仕事」を題材にした作品は、意外と難しいですよね。
フィクションであっても、どうしても現実に即して観てしまいます。
過去の作品では、「SHIROBAKO」は、リアリティがありました。
「さくらクエスト」は、地味ながらも地に足がついていたと感じます。
さて、この作品はどうでしょう。
「SHIROBAKO」も「さくらクエスト」も現在に焦点が当たっていました。
ある意味それが、リアリティを出していたのだと思います。
どちらもフィクションですが、フィクションとは思えない納得感がありました。
この話は、まず前提として「未来(夢)」があり「過去(思い出)」もあります。
そして、その間にある「現在(現実)」を舞台にしています。
「お仕事」を題材にしつつも、先の2作品に比べて「物語」的な要素が強いです。
そうなると、作品としての難易度がとても高くなります。
それは、「夢」について真剣に考える必要があるからです。
そして、「思い出」について真剣に向き合う必要もあるからです。
この2つを軽く見ると、現実がただの「ごっこ」にしか見えくなってしまいます。
脚本がしっかりしないと、本当にただのフィクションになってしまいます。
そう考えると、10話までの内容では、正直、少々薄く、軽い感じが否めません。
しかし、11話で風花がくくるに言ったセリフで一気に変わりました。
{netabare}
「たとえ夢を無くしたとしても、未来が無くなるわけじゃない」
夢よりも、まず、いまここにある現実を見ないといけないと言ったのです。
誰がどう見ても手遅れな夢にすがりついている、くくるの目を覚まさせます。
{/netabare}
夢を無くした風花だからこそ言えたセリフでした。
これにより、この物語が最後に引き締まったと感じました。
分割2クールの1クール目なので、まだいろいろ判断はできません。
未来(夢)、過去(思い出)、現在(現実)の交差は、自分の好きなテーマです。
2クール目には、もっと何かあるといいなと期待します。
■ 2021.12.22 2クール目視聴済 ■
思い返せば、1クール目は、実は、意外と良かったのではないかと言うことです。
思い出と夢と現実の狭間で葛藤し、奮闘する姿が描かれていたと思います。
ある意味、過去にも未来にも広がる奥行きがある話だったかなと。
そして、なによりもがまがま水族館を守れなかったところが評価できました。
最後にちゃんと厳しい現実を突きつけたからです。
一方、2クール目は、思い出にも夢にも折り合いをつけてしまった後の話でした。
新しい場所で、向き合うべきは、今、この現実だけです。
そう言う意味では、地に足がついたお仕事物語だったと言えます。
ただ、残念なことは、テーマがブレてしまっていたと感じることです。
この作品が描きたかったのは、彼女たちの成長なのか、環境問題なのか。
それとも、その両方なのか。
私は、彼女たちの成長を描くことが目的だったと思います。
そして、その象徴として、やりたいことが見つかると言うものです。
それが、魚や生き物のためにできる環境問題に取り組むことだったのです。
あくまでも環境問題は、彼女たちが見つけた目的だったと言うだけの話です。
しかし、あたかもそれがテーマのように感じられてしまうところが残念なのです。
彼女たちの成長の象徴として、副館長のくくるに対するあだ名が変わりました。
最初は、ただ漂っているだけのプランクトンでした。
これは、自分で進むべき道が分からない象徴です。
それが、最後に遊泳能力を有しているネクトンになりました。
これは、自分で進みたい方向に向かうことができることの象徴です。
最初、副館長のこのあだ名は、ハラスメントじゃないかと思えました。
しかし、実は、この作品の最大のテーマだったのです。
自分で進みたい道を見つけ、自分の意志で歩んでいく。
これこそが、人が成長するということだからです。
そして、見つけた道を進むためには、現在の自分の立ち位置を知ることが大切です。
自動車のナビでも、現在地が分からなければ、進みたい方向の道を指し示せません。
自分の現在の立ち位置が分かったら、今度は、"あがく"ことが大切です。
この作品は、1クール目で、どうにもならない過去や夢をスパッと切り捨てました。
そして、"現在"だけに焦点を当て、その"あがく"様子を描こうとしました。
そう考えると、実は、全体的にはよく考えられた構成の作品だったと思うのです。
しかし、せっかくのその構成を描き切れなかったことがとても残念なのです。
この作品は、水族館等の絵もきれいですし、キャラもとても可愛く魅力的でした。
そう言う意味では、とても癒される作品だったと思います。