レオン博士 さんの感想・評価
4.3
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
挫折を知った2人の少女が目覚めた夢の中で見つけたもの
【紹介】
2クールアニメで、1クール目と2クール目では大きく作品の雰囲気が変化する作品。2クール目のほうが面白かったです。
最初は人気アイドルグループを脱退した美少女が偶然目に留まったポスターを見て家出し、沖縄に行って潰れかけの水族館にたどり着いた。
そこの館長代理で潰れかけの水族館を立て直したい少女と出会い、二人で四苦八苦しながら再建を目指す話です。
【作画】
とても綺麗ですね。キャラデザも好き。
特に光の表現が抜群で、明暗の描き方がとても素晴らしいです。
【音楽】
作中BGMはもうちょっと沖縄感ある曲調でもいいかなとは思ったけど、結構いい感じで好きです。
1クール目ED「月海の揺り籠」もの悲しくて神秘的な感じの曲。かなり好き。
2クール目OP「とめどない潮騒に僕たちは何を歌うだろうか」
つらいことがあったけど切り替えて前を向いて先に進んでいくんだという意思と希望が感じられる爽やかなOPですね。
2クール目ED「新月のダカーポ」は夏の終わり、余韻を感じさせる穏やかな曲。
【シナリオ】
シナリオは結構残念なところが目立ちます。
なんか良くなりそうだった場面はいくつかあったんですが、結局シナリオは最後まであまり盛り上がらなかった。
作品全体のコンセプトがあるようでないのが致命的かも。
シナリオの良さよりも、雰囲気の良さを楽しむ作品ということでしょう。
【シナリオについて、期待したことと、期待を裏切られたことについて】
{netabare}
まず、水族館のお仕事の話というのは新鮮で興味深いと思いました。
1クール目は水族館のお仕事の側面が強くて、面白いところもあったけど、くくるの横暴なふるまいがいちいち気になって残念でした。
1クール目は夢を挫折する痛みを知る風花が、同じような苦しみをくくるにさせたくないという思いとは裏腹に
厳しい現実に対して有効な手立てを知らず、自分の力のなさを自覚しないままがむしゃらに頑張るくくる。
くくるのやっていることが再建につながらないことはずっと思っていて、
本当に再建する気あるの?こんなことしても何も変わらないよ?ってずっと思っていたけど
都合よく奇跡が起きて再建なんていうくだらないシナリオじゃないのは本当に良かったです。
1クール目は、くくるが挫折と現実を知るまでの物語だったんですよね。
ここから私が期待した部分なんですが、
現実の厳しさ、自分の力のなさ、挫折と絶望を知ったくくるは、ようやく風花と同じ目線に立つことができて、
視野が広がったことで何も知らずに自分が思い描いたことだけをがむしゃらに頑張っていたころと同じようにはいかなくなった。
現実を知った彼女は、自分のやりたいことを抑えてやりたくないことでもやらないといけないこともあるんだと知っていく。
それでも一度挫折を経験した風花の存在があったから、彼女は腐らずに、できることとできないこと、
かなえられる夢と、かなえられない夢の違いを認識させて前を向かせたことで、成長するというシナリオが私は良いと思いました。
風花にとっては挫折を知らないくくるが、くくるにとっては挫折を知る風花が、それぞれ自分の心に足りなかったものを埋めてくれたんですよね。
描いた夢をかなえる物語は確かに心地いいけど、そううまくいかないってことを私たちは大人になる途中で知っていく。
じゃあうまくいかなかったら、どうしたらいいの?
その疑問に対する一つの答えをこの作品には描いて欲しかった。
そういう成長物語的な側面はそんなに重要視されてなくて、結構なあなあで話が進むのは勿体ないって思った。
たしかにくくるは1クール目での挫折を通じて成長しましたが、2クール目ではがまがまのことを懐かしむでもなく悲しむでもなく、
普通にティンガーラでの仕事を一生懸命頑張るアニメになっていて、
これなら1クール目のがまがま編いらないんじゃない?って思ってしまった。
2クール目は最初職場の雰囲気が最悪でしたが、わだかまりが解消されてからとても良くなりましたね。
惜しいのは水族館のお仕事っていう側面がだいぶなくなったところ。
水族館の専門的な話とかにも期待していただけに残念。
{/netabare}
【キャラクター】
男性キャラはだいたいいい感じで副館長以外は好印象だけどあまり出番多くないのが勿体ない。
空也が特に好き。女性の部屋のトイレだから女子トイレでしょ?って言って外にトイレ探しに行くところとか、キャラが徹底していてなるほどって思った。
{netabare}
1クール目のくくるはかなり性格に問題があって好きになれなかった。
かなりわがままで理不尽ですよね。
2クール目は挫折して少し成長したのか、まだ自己中なところは目立つけど
好きなことややりたい事があって、でも現実はそれを許してくれなくて、失意、挫折、絶望。
一人では抱えきれない想いも、周りのみんなの励ましや協力で諦めずに前を向いて頑張っている姿は良かった
また、2クール目で増えたキャラクターはだいたいいい感じで、がまがまのメンバーも含めていい雰囲気で理想的でした。
1クールのラスト~2クールの途中までは良い感じでした。
風花はずっとお人よしのいい子すぎて、未熟なくくるを成長させるための精霊みたいなポジで、便利に使われている感があって不憫。
もっと人間的な起伏があっても良かったような。
副館長は酷すぎるパワハラ上司だけど、酷すぎて逆に面白いかも。
知夢が感じ悪い理由はわかったけど、これは共感できないかな。ちょっと大人げなさすぎる。
個人的な悩みでストレス溜まっていたのを、子ども相手にぶつけていただけで、なあなあで改心して許された感じなのがモヤる。
ギスギスしてるよりはずっといいけど。
{/netabare}
【不自然なところ】
{netabare}
風花にペンギンの餌やりさせて、説教するシーンは、素人にろくな説明も研修もさせずに餌やりさせるほうが悪いと思う。
大切に思う気持ちがないとか言ってたけど、大切に思うならちゃんと研修させないと。
ただ、2クール目を見て、これはくくるの未熟なところをわざと見せたのではないかって思いました。
ティンガーラが、がまがまの生き物と従業員全部引き取るってのは、私はよくわからないけど色々無理あるんじゃないかな?
いくら営業が順調な水族館って言っても一度に人や生き物増えるといろいろたいへんそうで、
こういうのって、全国の水族館に分散されるイメージあるけど。
風花のアイドル設定は不自然なことが多すぎてリアリティがない
彼女が干された理由が変、辞めた経緯が変、沖縄の水族館に急に行こうと思った行動が変、辞めた後にちょくちょく芸能界がかかわってくるのが変。
グループの生命線ともいえるセンター候補になるようなメンバーを無理やり引き止めるならわかるけど、
積極性が足りない程度で干しておいて、事務所のみんなで落ち目だよねとか悪口言って出て行ってせいせいするみたいなリアクションがね。
何か恨みでもあるの?
女の子を大人の都合で利用するだけ利用して、ひどすぎる事務所だと思う。
{/netabare}
【総評】
このアニメの難点は、物語が盛り上がってくるまでの準備期間が長いこと。
2クール目は面白かったです。
ただ、1クール目の魅力だった水族館のお仕事部分が2クール目はあまりなく、ただの職場アニメになっていたのが残念で、2クール目の感じで水族館のお仕事の話やればちょうど良かったんじゃないかって思う。
あと、海の生き物の専門的な話とか環境問題とかにも期待していただけに、そっちが弱かったのも残念かも。
シナリオは期待外れでしたが、いい雰囲気のアニメで楽しかったです。