いこ〜る さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ドライで切ない青春譚
またなんだか難しいのを見てしまったなぁ・・・
という感じのオリジナル作品。
最終回だけはなんとなくわかったような気がするので、その感想を書こうと思う。
面白かった、そして切なかった。
この回は例外的にとても叙情的な演出がなされていて、どこか渋谷系のニアンスのあるインスト曲がBGMでかかり、ひたすらドライに環境音で押してきた今まで音響演出とは180度違って滅茶苦茶切ない。
{netabare}そういう音を背景に繰り広げられる長良と瑞穂が帰りついた世界は、まるで漂流などなかったのようなただの日常、と言うのもまた良い。
何よりそこにいたのは「もう一度友達になろう」と約束した希ではなく、約束を知らない希だったのは「やられた!」って感じで素晴らしい結末だった。何故ならそれがありそうな事、世界のリアル、に思えるから。
それでも、
元の世界では希は死んでいたのだから、約束の半分は(未だ叶わないながら)希が生きているこの世界なら果たされる可能性がある。そのほんの少しの希望も良かった。
もう一人の帰還者、瑞穂が瑞穂のままで戻っていたのはなによりだ。
長良が主人公、希がヒロイン、そしてこの瑞穂は同志。ダブルヒロインの片方ではなくて、主人公と同性のキャラクターとして配されても良い相棒役だから、忘れてちゃ話にならないのだけどね。
さてこのお話、たぶんハードコアSFに分類してしまえば何とかごまかせる気がするが、もう少し勇気を出して要約すれば次元漂流青春群像劇となるだろうか???
既にはてなマークの連発になるが、それも宜なるかなでストーリーの定石破りが甚だしいのだ。
いきなり学校ごとどこかに飛ばされ『漂流教室』を思わせるが、nyamazonのおかげで切迫感がない。
飛ばされた中学生たちは何らかの異能を発現させているが、異能バトルにはならない。
何より物語の中盤で元の世界に帰れないことがわかるとほぼ全員がそれを受け入れ帰らない。
と滅茶苦茶である。
それでいてお話の作りは比較的オーソドックスだ。
次元移動という離れ技をかましているが、基本は昔からよくある1話完結のオムニバス。初回いきなり最果ての島に飛ばされ、そこでのゴタゴタ(状況整理を兼ねた背景説明回)が終わった7話からはロードムービーで、賢者やら救世主やら希望や戦争や犬や猫が出てきて非常に寓話的。
ほら、なんか思い出すでしょ。
反対に音響は冒険的かつ先鋭的だった。
多分『SSSS. GRIDMAN』あたりからの流れだと思うが、BGMを廃しSEだけで押し通す演出は、この『Sonny Boy』で極まったように思う。つまりこれ以上やるとやりすぎになるくらい音楽を廃しているのだ。
まずOPが無い。
リアルな環境音だけで物語が進み、最後に銀杏Boysがかかってはじめて「あれっ?音楽って鳴ったっけ??」となる1話が象徴的で際たるものだ。そしてこんなキレた演出はこの回くらいだろうと思っていたら、OPはずっと無いしBGMもほぼ無し。むしろ挿入歌がかかる方が多かったくらい。
徹底的にドライで、それでいてウエットな部分はめちゃしっとりと。そういう意図だったのだろう。だから最終回のエンドロールは弾き語りになったのだ。←たまらなくエモいよね。{/netabare}
安易な感情移入を拒む乾いて硬質な物語。
それでいてどこか琴線に触れる湿度もある不思議な視聴感。
またなんだか難しいのを見てしまったなぁ・・・
でも、お勧めです。