nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
真の主役はユフィ。王女さまと白馬の騎士の行く末を見届けましょう。
世の中にこんなに面白いアニメがあるんだろうか、というくらいに衝撃でした。この作品を厨二病的とシニカルに批判することはできますが、そう単純なものではないと思います。
構造として親友同士の過去の因縁、両方等も元首の息子で権力を失っている。そして、正義感の違い。こういった対立構造をしっかりと設定に盛り込んでいます。
スザクに関しては騎士物語になっていましたし、ルルーシュは貴種流離譚になっています。こういう古来からある物語論をしっかり押さえて、最終回のシーンに結び付けてゆきます。
スザクに対するユフィ。このユフィが真の主役といってもいいでしょう。結果的に2人の男から日本全体までユフィによって運命が決まってゆきます。スザクはソクラス的な「悪法も法なり」を実践している訳です。これはシンゴジラでも皮肉たっぷりに描かれましたが、普通は「正論は人も社会も動かせない」というストーリーになります。
本作ではユフィという愛と理想と優しさの象徴のような女性が登場し、2人が合わさることで力を持ちます。そして鬱陶しいだけのスザクというキャラが途端にキャラとしての力を持ち始めます。
ランスロットの造形はまさに白馬であり、白馬の騎士とお姫様という童話の世界のようなカップルが、どんな権謀術数や武器にも勝るという部分が素晴らしかったと思います。
(コーネリアというキャラを置いて、初めは庇護すべきもの何も知らない無垢として描かれています。これはユフィに焦点を合わせようとした意図だと思います。コーネリアは最後まで成長できないで唯一、ユフィへの愛情を共有したスザクに…ということでこの姉妹の姉はユフィとの対比だったのでしょう)
一方でルルーシュのパートナーですね。ナナリーはモチベーションであって彼女は物語を動かしません。そしてカレンは、スーパーバイプレイヤ―です。エピソードの一つ一つでは重要な役割で大活躍ですが、彼女が動かせる情勢はゼロのパーソナルな状況と、局地戦における戦力としてです。もちろんルルーシュとの組み合わせはギアスという最大の仕掛けの秘密を共有するCCとなります。
CCという女性の悲惨な過去や皇族とのつながりを匂わせながら、秘密ははっきりとわかりません。本作におけるCCはそれでいいと思います。彼女は力を持つものの悲惨さの象徴でした。昔の男?もそうですし、CCの回想もそれを印象付けています。もちろんルルーシュも。
で、ゼロは結構俺TUEEEではないんですよね。どこか間抜けでもありますし。そして少しだけ見せる優しさで悲劇が…。
この2つの組み合わせにより、ギアスという力の悲惨さとユフィとスザクという理想のカップルの組み合わせの結末を最後に持ってくるこのストーリー構成。本当に面白かったと思います。
オレンジとか、あのランスロットの研究者コンビ、そしてラクシャータ、デードリッヒなどの魅力的なキャラが満載でエピソードの面白さを引き立てていました。特に学園パートではシャーリーですね。恋愛ヒロインとみせかけてなんという悲惨な役回りをしたことか。
クロヴィス死亡からのユフィの演説は、既視感がありました。あれ、と思ったらガンダムにおけるガルマからのギレンの演説のオマージュでした。ただ、これは敢えていれたのでしょう。まったく反対の思想であることを表明するという感じでしょうか。
ということはクリエータはここにテーマ性をいれたのかなあという気がします。ただ、このテーマ性についてはちょっと悩みます。正義の在り方というより戦争の正当性かなあという気がします。ガンダムとのベタな対比をわざわざしたのですから、こういう場合は言いたいことがあると思います。
結局戦争の正当性というのは、どこにもないし、どこにでもあります。ギレン=ユフィの結末を見ればわかると思います。そしてゼロの動機や最終回の結末を見ると、大きな視野を持っていた2人のライバルが結局パーソナルな問題が動機となる世界系にも見えます。
物語としての主役はゼロに任せ、テーマとしてはユフィ、スザクに任せたような形が本当にうまかったと思います。正義の実践については、どうでしょう。愛と理想の正義は失敗とみるか、それでもと見るか。
脇で見ているCCは戦いや人間の本性を知っています。超越した存在である彼女は何を見ているのか。ただ、それでも人とのつながりを求めてしまう。一番非人間的でありながら、一番人というものの悲しさの象徴のような人でした。
語りだすとキリがないですね。演出や物語の見せ方のうまさ、ロボットものとしての位置付け、SF設定や人間関係、恋愛などいろいろ書きたい事はありますが、長くなるのでこれくらいで。キャラの話ばかりでしたが、本作のすばらしさはやっぱりキャラだと思います。本当に意味のない主要キャラがいない素晴らしい話でした。そのキャラたちの動きの中にテーマ性を見出すことはできるでしょうが、まずは物語を楽しむのが正解かなと。
アニメ史上もっとも面白いものをいくつか挙げろと言われれば間違いなく入るでしょう。R2以降は入れない評価です。