ひろたん さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
主人公「さらさ」に感情移入できない。だからこそ「男役トップ」なのである。
この作品は、非常に面白かったです。
しかし、同時に常に違和感も自分のなかにつきまとっていました。
それは、主人公「さらさ」に感情移入ができなかったことです。
それは、なぜだろうと考えました。
結論は、主人公「さらさ」は感情移入すべき対象ではなく、観る対象なのだ。
つまり、アイコン(あこがれの的になるもの)的存在なのだと感じたからです。
この物語の主人公は「渡辺さらさ」と「奈良田 愛」の二人です。
「さらさ」は、高身長で天真爛漫、天然と思いきや実はとても芯の強い女の子。
「愛」は、国民的人気アイドルグループの元メンバーで美人。
しかし、過去のトラウマに苦しみ自分を押し殺して生きてきました。
この二人が紅華歌劇音楽学校の受験を機に出会うところから物語は始まります。
この物語の特徴として、主人公なのに「さらさ」視点で描かれていないことです。
もう一人の主人公「愛」から観たさらさを描いている構図になっています。
さらさは、寝坊もするし、成績もよくなければ、その天真爛漫さから敵も作る。
しかし、とてつもないポテンシャルを持っています。
次第に一目を置かれるようにもなり、同期生の中からも憧れる人もでてきます。
愛もそんな一人です。
この物語は、愛や同期生の視点から「さらさ」への憧れを描いているように見えるのです。
圧倒的に女性が多い少女歌劇の観客は、「男役トップ」には感情移入はしません。
観客が感情移入するのは、「娘役トップ」の方です。
例えば、ロミオとジュリエットであれば、ロミオではなくジュリエットの方です。
観客は、「娘役トップ」に自分を重ね合わせ、「男役トップ」に憧れるのです。
そんな観客の感情がそのままこの作品の空気感になっているように感じられます。
まるで感情移入したジュリエットから見たロミオを描いているようです。
そうです。主人公「さらさ」に感情移入できないのは、実は、この物語では
最初から「さらさ」がトップスターなのだと宣言しているかのようです。
愛もそんなロミオにあこがれるジュリエットなのだと思うのです。
この話は、さらさのポテンシャルをほんのちょい見せして終わってしまいました。
続きが非常に楽しみで仕方ありません。