nyaro さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ダブルミーニングまでは良いですが、トリプル目が活かせませんでした。
「隠し事」と「書く仕事」のダブルミーニングは活かせていましがが、「隠し子と」のトリプル目が弱かったですね。
家との関係または両家の確執についての2人で結婚して娘を生んだあとの奥さんのストーリーがほとんど見えないこと、なぜ漫画家になったのかという動機の部分描けていませんでした。
特にあの年齢が書いた箱。活かせてませんでしたね。奥さんは{netabare}事故死だったというオチにすると、我が子を思いやって自分の残された時間で{/netabare}母親の愛を実践するみたいな意味ではなかったことになります。というかあの箱の存在自体が不自然な気がしました。そういうストーリーの伏線にしていたのに急に畳んだ感じがしました。
まあ、映画マイライフ(ガンを宣告された父親が生まれてくる息子に生き方を教えるためにビデオを残す話)とか、ヴァイオレットエヴァーガーデン10話の模倣ではなかったのは逆にホッとしたともいえますが。
マンガ家の仕事を隠すという表面を流れる話の裏で、姫ちゃんが自分の家族の問題、奥さんと主人公の「隠し事」を知ってゆくという風に見せたかったんだと思いますが、ですが、結果としてバックに流れる伏線の説明と回収が無い事、主人公の事故に至る動機がギャグだか真面目だかわからないところ、記憶というありきたりな結末だったことなど、イマイチで中途半端でした。
せっかくここまで設定を考えたのなら、こういった部分の深掘りをもっともっと追及すれば良かったのに、と思います。
(実は奥さんは無理やり他の人と結婚していて、姫は主人公との間に独身時代に作った隠し子だった、あるいは主人公とは血がつながらない奥さんの隠し子みたいなストーリーを想像していたんですけどね。そうするとトリプルミーニングとか箱の意味とか活きてくると思うのですが、まあ、これは妄想です)
アニメ全体として、面白いのは非常に面白いと思います。重くなりがちなテーマをギャグの中に混ぜ込んで、見やすくしたのはなかなかの工夫だと思います。マンガ家あるある的なノリや、女性比率高めのサブたちも華やかで良かったと思います。いつの間にか先生が刺股(さすまた)を持っているキャラ付けも、原作者らしい面白みでした。
ただし、ニーズというかターゲットになる視聴者はどういう人たちを想定していたか、ですよね。ギャグと感動、家業と恋愛という悲恋もの。一体どれなのか。そして80年代的な演出(これはアニメの演出?)。沢山女の子達が出てきて主人公がモテまくる意味。
やり散らかして焦点が定まらないのが、味にもなりましたが、やっぱり中途半端でした。
キャラとして姫ちゃんに感情移入できれば、高評価になるのではないでしょうか。私もそういう見方をしたので楽しめました。ただ評価すると、ギャグとしては普通に面白い、感動巨編としては粗が見えるという感じで勿体ない話でした。
追記 そういえば主人公は「かくし」という名前なので「かくし」の「出来事」で「かくし事」のフォースミーニング目もありましたね。「姫の事」「秘め事」で「ひめごと」というサブタイトルがありましたので、当然狙っていたと思います。
後藤という苗字も「ごと」に引っかけていたのでしょう。劇場版によると奥さんは「小鞠(こまり)」となっていましね。
アニメは奇麗でした。80年代の永井博のイラストっぽいイメージは気持ちがいいです。江口寿史つながり(永井博オマージュのイラストを描いている)でいえば2021年夏アニメでSONNY BOYがありましたが、格段に本作の方が良かったですね。あっちのアニメにはこの雰囲気が欲しかったところです。
この雰囲気は特に湘南鎌倉との相性は最高ですし、EDは君は天然色、大瀧詠一です。今や80年代シティポップは流行の最先端です。その意味では20年代において非常に「新しい画」だと思いますし雰囲気の良いアニメでした。
(追記 どなたか鈴木英人風のイラストと書いていましたが、確かにそうも見えますね。ただ、大瀧詠一のジャケットは永井博、鈴木英人は山下達郎を描いていました)
声が絶望先生と同じで糸色望先生にしか見えなくて、話になれるまでちょっと苦労しました。声優さん同じ方ですよね?なぜ同じ人にしてしまったんでしょう。これは駄目だと思います。
そういえば絶望先生の原作最終回もやらかしていましたね。違う先生ですが奇面組もそうでした。ギャグの人って最終回描くのが苦手なんでしょうか?