レオン博士 さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
自己を見つめ、何が大事かを考える物語
【紹介】
直接的な表現が少なくとにかくわかりづらい作品ですが、「哲学」が好きな人は刺さるかもしれないです。
中学3年生のクラスごと異世界へ漂流してしまい、
元の世界に帰れず、クラスメイトで対立したり協力したりしながら帰る方法を探す、というのが当面の課題でした。
彼らには様々な能力が発現しており、一人一人の能力による影響が大きい
「十五少年漂流記」を参考にしており、各話のサブタイトルが十五少年漂流記のオマージュ。
全体的に陰鬱とした雰囲気、キャラクターは人間の嫌な部分ばかりが強調され、ビジュアル的な魅力もないし、何か大きな目的を達成してスッキリするような結末もない。
そういうストーリー的に魅力的なものは徹底的に排除され、人間の汚さばかり見せられて嫌悪感ばかりが増幅される。
それでも、彼らの心の弱さや迷いを「観測」することで、視聴者一人一人が何かを感じ取る。そんな作品だと思う。
刺さる人には刺さる、唯一無二の価値のある作品だと思う。
【声優】
悠木碧さんはどんな役やっても相変わらずいい味だしますね。
彼女がいるだけで作品の魅力がぐんと引き上げられますね。
【作画】
作画は良い。デザインはクラシックな感じで、あえてそういうデザインにしているのでしょうけど、死んだ魚のような目したキャラが多く、のっぺりしていてビジュアル的な魅力は低い。
【音楽】
無音な場面が多い。
これも一つの表現だと思う。
恐らくはBGMをつけることでキャラクターが何を感じているのか、答えを作ってしまうことを避けたのだと思う。
視聴者自身が察して感じてねということじゃないかと思います。
【能力】
どんな意味があるのか色々試案していましたが、深層心理にある不安やコンプレックスが具現化されたのではないかと思っています。
【キャラクター】
ラジダニと瑞穂が好きだな。
朝風とあき先生は痛々しすぎて見てられなかった。
朝風、思春期の男子なんてあんなもんなのでしょうか?
意識高い系で自信ないのに自尊心の塊。
ちょっと共感しづらいキャラクターでしたね。
かなり癖のあるキャラクターが多く、エゴがむき出しになっているので恐らく誰かしら不快に思うキャラクターいるんじゃないでしょうか?
中学生にありがちな自己主張、承認欲求、理想の自分と実際の自分の乖離といった精神的な未熟さが随所にみられ、人として好きになれるキャラクターはほとんどいない。
人間なんてこんなものかもしれないけれど、人としての嫌な部分や弱い部分もろい部分ばかりが強調されているのがこの作品。
でも悪い部分ばかりが吐き出されるだけじゃなく、悪い部分から人間の本質について哲学しているところが面白いと思う。
別にこの作品は性悪説を主張したいわけじゃなくて、あえて魅力的な部分は描かないのだと思う。
【シナリオ】
能力の扱いが異能ものにありがちな、正義と悪の戦いとかではなく
キャラクター同士の関係性のスパイスみたいな感じなのは新鮮。
なぜ漂流することになったのか、彼らは無事脱出できるのか、
個性的なキャラクター達それぞれの思惑は何なのか。
そういった謎に興味を持てるかがまず足掛かりとして必要で、物語後半では、それぞれのキャラクターの生き方を観測してあれこれ考えることがメインの話になりました。
極限状態に置かれた異能つきの青春群像劇というジャンルはかなり特殊で、
、またキャラクターの生き方を通じて自己を見つめなおす契機となる、今までにない味わいがある作品に仕上がっている。
【総評】
最後の最後まで肝心な部分は明確に解答が提示されなかったですね。
とりあえず異世界の謎の多くは大した意味はないんだと思います。
それよりも、長良や瑞穂が何を想い、どう成長したか、これからどう生きていくか。それが大事でたぶん、視聴者が想像して感じたことが答えなんじゃないでしょうか?
とにかくメッセージ性に全振りな作品。
見た目とかシナリオ的な魅力は少なく思春期の彼らが何に悩み、何を思うのか、それを観察して視聴者それぞれが何かを感じ取る作品だと思う。
アイデアは面白いと思ったし、謎を適度にちりばめつつ興味を引く展開の変化がメリハリきいていて面白かった。
キャラクターがいい意味でも悪い意味でも現実的で、人間的な心の強さやひたむきさと言った正の感情よりも
嫉妬や承認欲求や自己保全と言った負の感情のほうが強めなので、非常に生々しい。
さらに、世界の敵が征伐されるわけでも、みんなが幸せになって終わるわけでも、悲劇的なシーンが訪れるわけでもない。
ほんとうに人を選ぶ作品だと思う。
大衆受けする魅力に頼らず、等身大の中学生の集団を描いたところがありそうでなかなかない画期的なところ
いろいろと考えさせられることが多く、面白い作品だと思った。