nyaro さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
豊かな人生とは何かを考えさせられました。
初めは押しつけがましいCO2の環境問題警鐘のアニメかと思いましたが、ちょっと違いました。そういう要素がなくはないですが、一人の男の人生を振り返る話でした。まあ、鉄拳アニメの巻き戻しバージョンといえるかもしれません。
温暖化で水面が年々上がってゆくために、もとの家の上に家を重ねてどんどん高くするという設定を上手く使って、男は落ちたパイプを拾うために潜ることで、疑似的に時間旅行をするわけです。この演出というか発想が素晴らしいアニメーションでした。なお、セリフはありませんでした。
昔見た、核で死んでゆく老夫婦のアニメ…イギリスの…名前わすれましたが、ああいう感じかなあと思っていました(「風が吹くとき」でした)。雰囲気は似てますが、全然内容は違います。
本作の主人公は、老人で独居しています。寂しく見える単語です。ですが、本作はハッピーエンドでした。 {netabare}生まれ育った村が、初めて奥さんと暮らした家は水没しています。でも、彼は自然の中で奥さんと出会い、愛し合い、結婚し、娘を作り、元気に育ち、娘は結婚し家を出ます。奥さんと2人きりの生活は介護でした。そして死別。でも、最後男は、いなくなった奥さんを偲んで、思い出のワイングラスで乾杯します。 {/netabare}
人生における最高の終わり方だと思います。配偶者より先に死んだほうが幸せかという議論がありますが、これはそういう問題ではないと教えてくれます。2人で過ごした人生があったから、送る方も送られる方も幸せだということです。
拝金主義または自分に都合のいい権利だけ主張する人権主義では、おそらくこの幸せはわからないだろうなあ、と思います。彼は家族を持ち人生を送ってきました。ただ、そのことが彼の生まれた意味だったわけです。
これ以上言うと思想的な話になりますし、もっともっとこのアニメーションについては語れることはありますが、これくらいにしておきます。
本作はたった12分の話ですが、一人の男の幸せな人生を見せてくれる素晴らしい作品でした。