nyaro さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
強さとヒーロー像の相対化がワンパンマンの面白さなのでしょう。
ワンパンマンのテーマとしては、1期よりも2期の方がはっきり見える部分があります。それは強さやヒーロー像を相対化することです。
まず強さです。周囲は人生をかけて修行をしたり、サイボーグになったり、怪人に魂を売ってまで最強を目指します。で、己の存在意義をかけて死闘を繰り広げます。陰謀や駆け引き、作戦、戦略を駆使して皆が勝つことを究極の目標に物語は展開しています。
本作では天下一武道会のような大会を延々とやっていたわけです。でも優勝を決めて、みんなに賞賛されているところに超強い怪人が現れて全部なかったことになります。優勝したスイリュウがメタメタにされます。これが第1段です。
第2段でこの超強い怪人に誰も勝てない、どうしようというところで優勝できなかったサイタマが倒してしまいます。
ドラゴンボール意味ね―じゃん、とわかりやすく語っています。つまり、例えばですが、旧来のジャンプメソッドで、強敵→敗北→修行→再戦→勝利の構造をワンパンマンは破壊してしまいます。ワンパンマンがジャンプ漫画というのも面白いところです。
もう一つはヒーロー像、その中でも志です。サイタマは9話でキングと語り合います。最強になって伸びしろがないと悩みます。でも本当は最弱なキングはサイタマにヒーローとしては「人のために」という部分でまだまだだよね、と。2人はそこで納得します。
これをキングに言わせることがセンスの良いところです。なぜか。勝てなければ意味がないからです。どんなに志が高いヒーローがいても、人類が全滅あるいは支配されては意味がありません。最弱S級ヒーローのキングが言うことで、それを語る滑稽さが出てきます。
だから、みんなが命がけで戦っているときにサイタマはキングとゲームで戦ってキングに連敗します。これが最大の皮肉なわけです。そして、誰にも勝てないという、ムカデの怪人が現れます。絶望かと思いきや、最後はサイタマがしれっと現れてワンパンでやっつけてしまいます。ここで「人のために」みたいな志の高さの意味が無くなってしまいます。
最後、自分の命を犠牲にして敵に突っ込むみたいな利他主義、自己犠牲がワンパンマンにおいては無駄になってしまいます。
フブキとタツマキの姉妹の関係も同じ構造をなぞっていますが、ここはまあエロ成分なのでしょう。本作は作画が残念なのであんまりエロくないですが。 というか女いねーというのも最近のアニメでは面白いところです。
ただ、裏で展開する物語で誘拐された子供のために戦っているのも面白いところです。これは子供にとっては意味があることです。つまり、人によってはヒーローの存在に意味がある、という全否定ではないところも面白いところです。
この強さとヒーロー像の相対化の視点で、サイタマというとびぬけた強さを持つ人間が現れることで物語が全部ギャグになるという滑稽さを表しているわけです。この点が1期よりも2期のほうが分かりやすく描かれていました。
ただ、アニメの作画の出来とかワクワク感とか、設定の新鮮さという点で私は1期の方が面白かったです。