ナルユキ さんの感想・評価
3.0
物語 : 3.0
作画 : 1.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.0
状態:途中で断念した
ひとつ訊いてもいいかな……岸田メル先生のデザインはどこいった?
と、見出しで感じた率直な疑問である(言い回しはご存知ハガ錬ネタです)。
2017年に発売されたゲーム『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』(以下ブルリフ)。そのキャラクターデザイン原案は『アーランドの錬金術士』シリーズのキャラ立ち絵や『神様のメモ帳』の挿し絵も手がけた岸田メル氏が担当しており、その繊細で可愛らしい女の子キャラクターの外観でブルリフの人気を支えていたのは間違いない。
本作はそんなブルリフのストーリーの続きを描く3つのコンテンツの内の1つであったのだが……
【ココがひどい:のっぺりとしたキャラデザ】
本作は1クール丸々と作画崩壊────というわけではないのだが、原作ゲームとはかけ離れた独特なキャラデザや作画によってそのギャップに耐え難い仕様になってしまっている。
素人目から見てもキャラクターの顔に陰影が見当たらず立体感に欠けているのがよくわかる。色彩もおかしく、まるで初めてエアブラシツールでPC塗りしたようなベタッとした印象を受けて、全体的に「平面」な作画になってしまっている。陶磁器のような白い肌に酔っぱらって見える頬紅の付け方などにも違和感をおぼえてしまう。
初めから作画が酷いので、大体後半に見られる作画崩壊と呼ばれる箇所もある意味でそれがわかりづらいのが長所……ではないな(笑)
「メル氏の画はアニメ向きではない」という意見も見られる。確かにアレを完全コピーするのは至難の業だろうが、彼の原案を基に美麗なキャラデザを実現させた『花咲くいろは』もあり、制作会社J.C.STAFFが当時、本作の他に3本も抱えていたことも鑑みると、単純に雰囲気だけは寄せたが作画のクオリティは落としてしまったことが伺える。
【ココがつまらない:『想いの力』でゴリ押しバトル】
作画を扱き下ろした分、ストーリーは評価したいのだが、正直に書くと(1クールで断念したこともあって)可もなく不可もなく、といった感想だ。
ゲームだった前作の世界観を踏襲しつつも「原種」という怪物から「リフレクター」同士の戦いを主に切り替えたことでマンネリ化を防止している。そして少女の抱えきれない『想い』を花(フラグメント)として摘み取っていく側と、そうはさせまいとする主人公側の2つの正義の対立を描けば本来、盛り上がることこの上ない筈である。
しかしバトルシーンはあくびが出るほど単調だ。
{netabare}リフレクターの主武装は変身者によって様々な筈なのだが、私の視聴範囲で登場したリフレクターは6人中、5人が前作ゲーム主人公と同じ「ガラスのような剣」という被り具合である。
剣同士の戦い──時代劇のような殺陣を描くのならそれも悪くなかっただろう。しかし彼女らの剣を使った戦いに「技」というものは見受けられず、只々得物を振り回し、時たま何の策略もなく得物から光線や電撃を放つだけだ。
リフレクターは「魔法少女」である。ゲームでは強力で様々な効果がある代わり、共通して一定のリチャージ(再使用時間)がかかる「魔法」と主武装で敵と戦ってきた。いつ・どこで・どんな魔法を使い、リチャージ中を如何にして立ち回るか。そういった「駆け引き」を描けば対人戦であるリフレクター同士の戦いは面白くなるだろうに視聴範囲では「私の『想い』の方が貴方より強いんだ」という、所謂“脳筋”同士の戦いを描いてしまっている。彼女らの戦いは「想い想い」と口にしながらつば迫り合いをしている印象しか残らない。 {/netabare}
【総評】
実際ストーリーは1クール分しか観れてないのでもうあまりとやかく書くつもりはないのだが、その理由としての作画──キャラデザ──の悪さが原作ゲームの絵柄を知っている者にとってとてもショッキングだったことは改めてお伝えしたいと思う。
魔法少女と変身ヒロインの境界が曖昧になっている今日だが、そのどちらにしてもキャラクターには「可愛さ」が求められる。本作のキャラクターは内面で少女の心の脆さ、ヒロインの可憐さや力強さをしっかりと描写してはいるものの、それらとのギャップを狙える筈の外面が客観的に、ハッキリ言って少しも“可愛くない”のである。常に作画が低空飛行状態なので他作品の「作画崩壊」のようなネタにもならないのが割と致命的だ。
『魔法少女まどか☆マギカ』が微妙なキャラデザを精巧な脚本でカバー出来たように本作にも何か別の魅力が備わっていればもっと評価されていたとは思うが、本作はどちらかと書けばまどマギではなくその外伝の『マギアレコード』に似たものを感じた({netabare}敵が功利主義、主人公のワンパターンな主張、敵の功利主義を主人公らが崩せないので後半で綻びを見せるetc.{/netabare})。3つに分岐された原作の続編ということで境遇も似通っている上に放送時期も同期であった。より注目度の高かったあちらの評価も散々である以上、本作の評価・注目度もまた言を持たない。