ひろたん さんの感想・評価
4.4
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
聖なる憧憬
自分の中の安倍三部作(lain、NieA_7、灰羽連盟)の1つです。
当時、イラストレーターの安倍吉俊さんの絵がネットに公開されていました。
とても人気がありました。自分も好きでした。
そこから自然な流れでこの三作品も観た記憶があります。
ただ、安倍さんのキャラをアニメ化すると原画のもつ独特な雰囲気を損ないます。
それが、とても残念だった記憶もあります・・・。
この三作品のなかで、灰羽連盟は、安倍さんが原作・脚本まで行った意欲作です。
当時は、唯一無二の世界観の作品だったと思います。
その後、この作品に影響を受けて生まれたのが「Angel Beats!」なのは有名な話。
今回、灰羽連盟をひさびさ(たぶん15年以上ぶり!?)に観返しました。
驚いたことに思いのほか内容を覚えていたのです。
当時、それだけ印象的な作品だったのでしょう。
この作品は、世界観に引き込まれるという感じとは少し違います。
どちらかと言うとこの世界の謎が気になり答えを探して見続けてしまいます。
・頭上に光輪を持ち背中に灰色の羽をもつ「灰羽」とはいったい何者?
・四方を壁に囲まれ、その外とは行き来が許されないこの街はいったい何?
・主人公たちの過去は?そして、未来はどうなる?
実は、これらの謎は、最後まで明かされることはありません。
{netabare}死後の世界だとか、壁を超えるとそこは来世だとか、輪廻転生だとか。
灰羽の墨付きは、自殺によって罪を背負ったからだとか。{/netabare}
いろいろ予想はできてしまいす。
ただ、物語の中ではそれらは語られることありませんので予想の域を出ません。
しかし、この作品を観ていると、これでいいんだと思えてきます。
中途半端な世界観を見せられ安っぽくなるよりは、はるかに良いと思っています。
逆にこれらの謎を残しているから、不思議な余韻が残る作品となっています。
この物語は、主人公「ラッカ」がこの世界にやってくるところから始まります。
そして、そんなラッカの面倒をみてくれる「レキ」の二人を中心に話が進みます。
「聖なる憧憬」は、灰羽連盟のイメージアルバムのタイトルから借りました。
「憧憬」の意味は、
「目ざすものを得たい、理想とする状態に達したいと強く望むこと。」です。
また、「その気持ち。あこがれ。」のことです。
実は、この気持ちは主人公ラッカのものではなくレキのものです。
それでは、「聖なる」とはどういう意味でしょうか?
ここでは具体的には書きませんが、これは、レキの憧れです。
そして、そこへ至る道のり(行い)のことでもあります。
自分は、この作品に対しては、この解釈でいいんだと思いました。
この物語は、この「聖なる憧憬」を通して二人が答えを見つけていく物語です。
迷いと葛藤を繰り返しながら答えを見つけていく点は、lainと似ています。
しかし、lainでは主人公一人でしたが、灰羽ではラッカとレキの二人になります。
このあたりを見比べるのも面白いです。
この作品は、正直、好き嫌いがはっきりする作品だと思います。
それが個性でもありますが・・・。
しかし、独特なミステリアスさから最後まで一気観できてしまいます。
最後に謎は残りますが、意外と自分の中で答えも出せる不思議さもあります。
観終わった後、「きっと、こう言うことなんだろう」と自分で納得できるのです。
謎が残る作品では、これはとても珍しいことだと思います。
自分の中では、lainとならんで名作認定している作品です。