nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
シリーズの中で羽川翼は特別です。白も含む感想です。
猫物語の黒と白は対にして感想を述べたいのでこちらに書きます。化物語シリーズの初期では、羽川翼という完璧な少女の心の中に潜む闇をしつこいくらい描いています。それに白の出来が良くて、物語シリーズの中で最高でした。羽川という少女の結末を描いた物語は最高に面白かったし、切なかったです。
黒では血のつながらない両親との関係、あらゆることに完璧であろうとする羽川とその羽川に恐怖を感じる両親。羽川サイドでみると両親が悪いだけに見えましたが、最後に忍野の言葉でひっくり返ります。
普通こういう状況で病んでいる人間は目や表情、行動の異常性などを表現します。なのに完璧な人間の非人間性というキャラ付けの割には羽川のキャラはやさしく、明るく社交的です。作られた完璧人間というステレオタイプでないことが、ブラック羽川という存在の異常さを上手く描いていました。
そして憑依ではなく共存という結果は、完璧な人間の内面の葛藤を良く表していました。また、化物語では、ブラック羽川はかなわない恋心の象徴でもあり悲しい存在でした。これがなにより切ないです。
ブラック羽川はずっと下着姿でエロいと言えばエロいのですが、表情の作り方が上手いのかあまりエロさを感じませんでした。解放の表現でもあったのでしょう。
白です。白では嫉妬ですね。苛虎という怪異。多分中国の言葉で「苛政は虎よりも猛し」から来ているのでしょう。火の虎や過去ともゴロ合わせをしています。恋愛感情について化物語で一度決着はつきましたが、その後の再び妬心が蓄積していって、虎を生み出したわけです。猫は化物語で自殺にも近い状況を自ら作り出して一度は消えようとしたわけですが、羽川の危機に復活します。
羽川はいろんな人間に説教を食らうわけですが、すべて本質を外しています。最後は結局自分で嫉妬に気が付きました。
黒と白そして化物語を見る限り、どうもブラック羽川が悪の権化やストレスの塊に見えません。本当の化け物はブラック羽川ではなく羽川翼本人なのでしょう。または、ドラマツルギー言葉によれば憑き物が落ちているという話でした。この段階で苛虎を分離しているので羽川の奥底にある暗部は嫉妬ということでしょうか。あるいは人間味を取り戻しつつあるという表現なのかもしれません。
それにしても、戦場ヶ原の女気やブラック羽川の人間味は胸が熱くなります。そして羽川の最後の手紙良かったですね。この猫物語の黒と白はやはり対で見たほうが羽川という人間について考えることができそうです。
ギャグというより言葉が面白いのは相変わらずです。羽川と戦場ヶ原のお泊りから朝食にかけては本当に素晴らしかったと思います。
白のEDのアイヲウタエ。いい曲でした。本作にぴったりの歌詞内容でした。
物語シリーズのヒロインの一人、羽川本人に焦点が当たる物語は、他のヒロインたちの物語に比べ、重層的ですし、感動もあります。何よりブラック羽川という化け物が非常にいいキャラでした。