ひろたん さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
美しくグロテスク
寺社仏閣の一見煌びやかで美しい装飾。
よく観ていると得体のしれないグロさを感じることがあります。
モチーフは、黄泉の国だったり、極楽浄土だったり。
それは、美しいイメージと同等ぐらいに怖さも感じるからです。
身の回りにだってそう言ったものであふれています。
例えば、そこの美しい蝶。
よく観ると鱗粉はきれいですが蛇の目は怖いです。
腹部もきれいな模様をしていますが気持ち悪いです。
案外、美しさとグロテスクさは紙一重なのかもしれません。
この作品を観ていてそう思うのです。
この作品では、血や臓物のような分かりやすいグロさは出てきません。
細部までとても美しいです。
でも、それと同じぐらいグロさを感じるのです。
美しいものを見ているはずなのに、なぜだか胸がざわざわします・・・。
この作品は、人の心と魂がテーマの1つとなっているようです。
人は死ぬとどうなるのでしょうか?
この作品では、魂は天にのぼり、肉と骨は地上に残されるのだそうです。
では、魂とは、一体何なのでしょうか?
人の心でしょうか・・・?
いえ、それは、違うのだと思います。
もし「魂」が「心」と同じものなら輪廻転生しても前の人のまま変わりません。
そんなのは、認められないでしょう。認めたくもありません。
「心」は、あくまでも体の持ち主のものです。自分のものです。
死んだらそれまでのものです。
つまり、心とは体とは切り離せないものであり、天に上る魂とは別物です。
魂とされる月人に一切の「心」を感じないのはそのためでしょう。
月人が何を考えているか、不気味で不可解なのも「心」が無いからです。
逆に地上に暮らす主人公たちには「心」があるのだそうです。
人間は、魂に対して美しさを感じます。
その反面、実はよく分からないから怖さも感じます。
それが根底にあるから、この作品に対し美しいほどにグロテスクさを感じます。
実はこの作品、主人公フォスの独り言がいちいち面白いです。
諸先輩方に対して、歯に衣着せぬ生意気発言も一丁前です。
しかし、可愛い末っ子のフォスなので、みんなやさしいです。
いざとなったら助けてくれます。
そんなフォスだから、のびのびとした心の持ち主に育ちました。
心はそのような環境の中で育まれるものなので肉体とは切り離せません。
逆に死はすべてを台無しにしてしまいます。
そのかわりに生を価値あるものにしています。
それは、生きている間は「心」があるからです。
では死んで心から離れてしまった魂は、どうなってしまうのでしょうか?
彷徨える魂は、なぜ再び宿主を探そうとするのでしょうか?
魂はなにかに満足すれば成仏するのでしょうか?
これは、物語が進んでいくと明らかになってくるのでしょう。
この作品は、まだまだこれからって段階で一旦幕を閉じてしまいます。
続編が非常に気になる作品です。