nyaro さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
2人の奥さんって何者?それが知りたいんですが。
まずアニメとしての話をすれば、米大統領が絡んできたところから、話としてはつまらなくなります。前半の曲世 愛と正崎 善の話のところは逆にメチャメチャ面白いです。
荒唐無稽に見えますがサイコパスというのは人間的魅力と虚言で人を操ることができるそうですので、その強化版と考えれば曲世 愛という人物造形は魅力的です。
本音をいえば正崎か米大統領の奥さんが実は曲世愛であることを期待しましたが、どうなのでしょう。少なくとも正崎の奥さんは日本のテレビでアメリカを見ていました。
ただ、この2人の奥さんのキャラが濃すぎる割に物語に絡んでこないのが不自然です。ラストは{netabare}正崎の子供と曲世が一緒にいましたね。 {/netabare}少し考察したくなります。
なぜ人を殺してはいけないかは、答えが出ない問題として知られています。社会学的に言っても自分の生存率を上げる戦略以外の答えはでません。生物学的なアプローチをしたところで環境が良ければ同族は殺しませんが環境が悪化すればむしろ積極的に殺しますし。だからこそ、印欧においては神という道徳の絶対基準が作られてわけで、結果人権や善悪の概念が生まれたと言えます。自分の命である自殺だともっと曖昧になってゆきます。人の尊厳の問題にもなるわけですが、まあ、この辺りは語ればきりがありません。
大統領や首相は絶対にこの問題は語らないはずです。これは政治ではないことを一番よく知っているからです。固定した道徳の規準がないと社会が統制できないからです。そして、大統領は絶対に自殺者を説得しません。成功しても失敗しても言葉の一つ一つにリスクが大きすぎるからです。
ここが話として非常に不自然です。となると、やっぱりあの奥さんですよね。なんで私なんかにあんな奥さんが…という大統領の疑問です。ゲームの世界にいるのも曲世が正崎に言った言葉につながってきますし。最後は曲世=バビロンという存在によってすべて「議論の意味」が消え去ってしまいます。
あの大統領は精神的にどこかおかしいようにも見えます。正崎もあまりに正義感がありすぎます。曲世を執拗に追いかけますが同僚を殺されたという憎しみという感じではなく、曲世に対する執着にしかみえません。それは新域の首長となった齋 開化の異常性にも通じます。つまり、この3人の男たちは…という気がするのですがどうなのでしょう。
考えすぎかなあ、という気持ちと少なくとももう1歩何かないとつまらないだろうという気持ちが拮抗します。奥さんたちはそれぞれの男の中に何かを見た単なる「いい女」の象徴だけの気もします。一方で本家の大淫婦バビロンは7人の皇帝の首の上にのっています。
新域が違法性があるように描かれていましたが、特区や条例の意味を考えれば全然ありだと思いますし、ミスリードのために特捜で政治腐敗っぽくスタートしましたが、まあ、ここは話の導入としては面白かったです。捜査の進行やあの女性捜査官も結果も良かったと思います。
で、やっぱり物足りないのが曲世の活躍?とか素性に関する部分がもっと描かれて欲しかったです。ラスト3話は興味はありますが、アニメでやるには問題が大きすぎます。むしろ、曲世、米大統領、正崎の行動によってその部分は語って欲しかったと思います。
なによりバビロンが何を狙っていたか、です。快楽=ゲームで殺しているなら底が浅すぎます。ここがもう少し練って欲しかったところです。
アニメの出来としてエンターテイメント性は後半かなり評価が落ちると思います。が、謎というか深さの部分は私の考えすぎかもしれませんが、細かく見て考察したいような気分になるアニメでした。