nyaro さんの感想・評価
4.8
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
真紅の美麗さが素晴らしい。痛すぎるテーマを受け入れられるかしょう。
真紅の美麗さは衝撃でした。赤というかベルベット地の緋色が素晴らしくゴージャスですし、髪も美しかったです。声も沢城みゆきさんのクールビューティーがぴったり合っていました。音楽も良かったです。特にOPは少し不思議なメロディーラインで不安感をあおりながら、耽美な物語が始まるという期待感を抱かせる素晴らしい出来でした。
本作は、ローゼンメイデンたちの戦いが本筋なんでしょうけど、やはり主人公ジュンが引きこもりと向き合う話なのでしょう。ですが、ジュンの勝手なふるまいの不快感や外に出たときの恐怖が結構リアリティがあって、正視できない人もいるのではないでしょうか。
バトルの内容は単純です。人形たちの戦いはもちろん楽しむことはできますが、その意味するところは理想の自分になるための戦いでした。それは決して実現しません。その業なようなモノ、人形たちの存在理由の悲しさも感じることができました。最終話で明かされる水銀灯の好戦的な理由も説得力がありました。
ストーリー全体で、特に印象的で重要なのは10話の後半でした。 {netabare} 真紅が戦いにおもむく前に、姉のノリと紅茶をめぐって話をするシーン。思いやりが正しいときも正しくないこともある。その違いはちょっとしたことというアドバイスをしています。
そして、ジュンの引きこもりの原因になったかもしれない手芸のスキルを魔法の指だと、珍しく最上級の言葉で褒めます。 {/netabare}
ツンデレですが、単純なデレではなく認めるという意味のデレで感動的な場面でした。
この前後も含めて10話の後半が、単純な美少女バトルアニメではないことを象徴していました。全13話の中でもっともいい場面でした。
問題は「生きることは戦う事」という結論でしょうか。これを引きこもりに強要するのは非常に危険とされています(斎藤環先生というアニオタの心理学者が引きこもりの本をいっぱい書いています)。
本作においては、真紅はジュンに戦う経験と自信そして自己肯定感を与えます。最後真紅の腕を直したのがその象徴と言えるでしょう。誰にもできないことをジュンはやり遂げたわけです。そして、ジュンは姉の献身に気が付くことで、戦う気持ちをもち立ち直って行きます。この結論は非常に良かったと思います。
が、この結論に少し嫌な思いをする人もいるのではないでしょうか。そこが少し気になりました。
ちゃんと完結していますし、ストーリーも面白い。テーマもちゃんとある。なによりアニメとしては出来がいい。複数回見られるレベルのかなり良作だと思います。