nyaro さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
異色作。人間の無力さを実感する癒し…とでも言いましょうか。
異色という言葉がこれほど当てはまるアニメもないでしょう。類例があまり思いつきません。強いてあげればブラックジャックを連想しました。1話完結で人の悩みや因縁などを解決します。が、解決といっても本人次第。解決の仕方も問題を除去することが根本解決ではなく、当事者の気持ちは?という解答に帰結してゆきます。
つまり、ヒューマンドラマということです。蟲が引き起こすネガティブな事象に対する人間の選択とその理由について描かれていることが非常に多いです。
ただ、主人公ギンコが対処した結果の結末は様々です。寓話的な要素が無くはないですが、一方で寓話とは対極の道徳的な答えがない物語もあります。まったく異質な存在である蟲にたいする人間の無情さ無力さと言えばいいのでしょうか。その意味では、マンガですが「ホリック」とか「百鬼夜行抄」のような要素もあるかもしれません。
一方では蟲は生命の象徴のようにも描かれていますので、自然という漠然とした概念を擬人化というか実体化させたようにも見えました。
この1話完結のストーリーを2クールやるわけですが、まあ、面白いです。殺伐とした話なのに人間の無力さとか自然との関係性がテーマなことが多いせいのか、絵と音楽の力なのか癒されます。霧とか水とかのふわっとしたものが表現されているのもいいのかもしれません。
日常系とは違う「魔法使いの嫁」の初期の作風で感じたような、残酷な現実の中の人間の無力さが作りだす達観というのでしょうか。
テーマを感じなくはないですが、あまり深掘りしない方が良さそうです。
という感じなのですが、実は1話目だけ非常に変わっていたと思います。まるで蟲に意思があって人間を取り込んでゆく。明確に人の形もしていました。人の気持ちが分かって、蟲がずっと孫を見守ってゆきたいという意思を確認しています。人と蟲の共存とか心の交流みたいな方向性にも見えます。
なるほど、そういう話なのかと思っていると、その先は人の善悪を超越したウイルスのような存在として描写されます。一部クチナワとか沼の話などは若干意思も感じられますが、この1話の蟲が特殊で初めの数話は戸惑いがありました。
物語は時代がよくわかりません。江戸というには庶民の暮らしぶりがもう少し自由がある気がするし農村部でも豊かです。明治の初期にしてはギンコの服装が…初めは転生ものかと思ったくらいです。ただ、物語的には時代考証は必要ありません。人の暮らしと自然。この関係性が見えればいいだけです。
日本のマンガそしてアニメの懐の広さを感じるような作品です。文学と言いたいところですが、やっぱりマンガの力でしょう。頼りないような、でもしっかりした画力の絵があるからこそ本作は感じるものがあります。アニメもその雰囲気を良く再現していると思います。
ほぼマンガ通りのアニメ化です。順番はシャッフルされていますが、ほとんど関係ありません。原作は読んでいますが、アニメの印象のほうが強いです。
面白さを説明するのが難しいアニメで、他の作品の名前を出してしまいましたが、似ている部分はあっても全体としてはやはり異色です。心に残る作品でした。