「楽園追放 -Expelled from Paradise-(アニメ映画)」

総合得点
76.4
感想・評価
890
棚に入れた
4660
ランキング
717
★★★★☆ 4.0 (890)
物語
3.9
作画
4.2
声優
4.0
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

ももも さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

アイデンティティのお話

西暦2400年。
人類の大半は荒廃した地上と肉体を捨て、データとして電脳世界「ディーヴァ」で生きている世界。
ディーヴァにハッキングを試みた謎の存在を追うため、主人公である保安官アンジェラ(くぎゅ)は地上活動用の肉体(本人のDNAを使用した16歳の少女の体)に受肉し、エージェントとして好んで地上で暮らしている人間ディーゴ(三木眞一郎)を雇います。

サーバから肉体に意識たるデータを転送したら、その魂(?)はもうコピーされた偽物なんじゃないのか?的な話は一切ありません。
ネットワーク上で、または各機器上に、移動しまくりです。

ネットワーク上での貧富の差…というか存在の優位性は「その人間に割り当てられるメモリ量」が目安で、メモリを多くもらうためにはディーヴァのために働き、評価を得る必要があります。
ディーゴはこの構造を「奴隷」「牢獄」と嫌悪していますが、アンジェラはこれを当然のこととして受け入れています。

割当メモリ云々の話が出たときに「あーディストピアモノで多分管理者とドンパチする感じかな?」と思いながら見てたんですが、ディーゴ(及び同種の人間たち)はディーヴァの管理者から追われるようなこともなく、それと認識された上で自由に暮らしています。
アンジェラも面倒な肉体をむしろ嫌悪し、データとして生きることを自ら選んでいます(まあこの点は「刷り込み」とか「若さゆえの世界の狭さ」とか色々ありそうですが)。
ともあれ、管理社会と戦う話ではありませんでした(戦いはしますが)。

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アンジェラは地上で捜査する中で肉体に響くビートとしての音楽を聞いたり、肉体の体力的に疲れ果てたり、物を食べたり、いろいろな経験をします。
これが肉体として暮らすことへの偏見が変化していくきっかけになりますが、データとして生きることへの疑問にはなりません。「肉体も悪くないかもね」くらいはあっても、「データとして生きるって何?」とはなっていません。
つまり、思想としての管理社会との対立構造にはなりません。

ハッカーの正体は「長い時間の果に自我を持った、限りなく人間に近づいているAI」であり、人間に対して敵意はなく、むしろ争いを避けるために地球から出ていこうと準備をしていたのでした。

アンジェラはAIに敵意が無いこと、地球から立ち去ろうとしていることを踏まえ、そのまま見逃すことをディーヴァの管理者に提案します。
このアンジェラの判断に「管理者たるディーヴァへの疑問」とか「肉体への憧れ」とかそういう要素は一切ないです。
ただ「いいやつだし悪意はないっぽいから見逃してもいいんじゃないですか?」というだけの話です。

ディーヴァの管理者は不穏分子を許さず、AIと、AIを庇ったアンジェラの処分を決めます。
ここで初めて対立構造になり、アンジェラは「アーカイブ化(意識の凍結)」から逃げるために再度受肉します。
ドンパチの末最終的に逃げおおせたアンジェラを管理者は把握していますが、「脱落した保安官」として最後は追うことをやめているようです。

「やろうと思えばディストピア表現もできそうな管理社会」「人間的な意識を持ったAI」「地上で暮らす人間たち」
これらはプロットで直接結びつくわけではなく(もちろん関連はしますが)、要素としてただ散りばめられています。
イベントとしては、人類側のエゴによるドンパチの末、AIが人間らしく旅立つ、ただそれだけです。
ここから何を感じるかは視聴者に委ねられています。

割とふわっとした視聴感といいますか、もうちょい押し付けがましくてもいいんじゃないかなぁという感じがしました。

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ビジュアルについて。
本作は当時「フルCGアニメ」としてちょっと話題になったのを覚えています。
相当力が入っていると思いますが、今では流石に少し古い感じがするかも?
加えて表情に漫画的な表現をちょいちょい使ってて、CGの優位性をスポイルしてるような気もちょっとしました。

投稿 : 2021/09/11
閲覧 : 222
サンキュー:

6

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