nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
他人の為に生きる事が生命の循環。子供の幸せを親が定義するな。
久し振りに見たら涙が止まらなかったです。以前見たときの何倍も感動しました。アニメレビューを重ねて考える習慣が多少は役に立った気がします。全面的にレビュー書き換えます。名作認定はしてましたけど、ちょっと過小評価だったかもしれません。
考察系アニメの最たるものではありますが、しかし、この感情を動かされる部分のほうが重要な気がします。
結論は、親は子供にこうなって欲しいと思ってはいけない。期待してはいけない。子供の幸せを勝手に定義してはいけない。それをすると、子供は歪み、透明になる。何者にもなれなくなる。
ただ、一緒にいて愛すればいい。また、それが出来るのが本当の家族で血のつながりだけではない。子供を飢えさせてはいけない。居場所を奪ってはいけない。一人にしてはいけない。
人間いつかは死ぬ。だったら他人のために生きることが、生命の循環に参加するということ。つまり「輪る」ピングドラムです。ピングドラムの意味はラストに明示されます。
難解なようでいて、実はしっかり見ていると、これらのことは読み取れると思います。
「地下鉄の事件」と「透明な存在で有名な事件」がなぜモチーフなのか?これらの事件の主体は、親の期待や世間の価値観に押しつぶされて成長した人間の正義です。子供の幸せを親や社会の価値観で型にはめると自己肯定ができない「何物にもなれない」人間になってしまう、と言う風に読み取りました。
多蕗桂樹、時籠ゆり、夏芽真砂子の3人も親の価値観の型にはめられ、押しつぶされた人間たちでした。
子供ブロイラーというのは、子供=経済価値=成績至上主義、ランキング主義の親の事だと思います。それは愛と言う言葉を借りたエゴであり、そここそが子供を何者にもなれなくし、透明にしてしまうということでしょう。
桃果は無償の愛、手を差し伸べてくれる、自己犠牲などの象徴で、渡瀬は金がすべて、利己主義、自己中心の象徴だと思います。
苹果については、銀河鉄道の夜の蠍の炎=心臓=リンゴということだと思います。とはいってもリンゴにはエデンの園のメタファ―もあるので、生命、知恵、現在、救済など様々な象徴なのかもしれません
また、冒頭の子供2人の会話とラストの会話、画面を重ねると「輪る」の意味がよりしっくりくると思います。(ラストの2人は{netabare}子供の頃のカンバとショウマでしょう {/netabare})
そこでまた「何者にもなれない」が活きてくる気がします。長い歴史の中でいずれ忘れ去られる。多少お金を稼いで贅沢してなんになるのだろう?損得ではなく「何者にもなれない」からこそ他人のために生きる循環にはいると、永遠に生きることになるという意味ではないでしょうか?
ダブルHは「何者かになれた」トリプリルHは「何者かになれたかもしれない未来、つぶされた可能性」でしょうか。
難解なようでいて、一度見て考えて、もう一度視聴すると色んな意味がわかって、そして、3人の生き方の切なさと、やっぱり3人で出会えた運命が非常に胸に来ます。
間違いがあっても、本作はこうやって考察はすべきアニメだし、もっともっといろんな視点があると思います。
ですが、あの派手な家の理由がわかったときの衝撃はもう涙がとまりませんでした。3人が貧しくても肩を寄せ合って暮らしている。なせ、そのまま放っておいてあげられないのか。
「天気の子」にも通じますが、ピングドラムが制作された時期より今の方がもっと切実で、本当に憤りを感じます。考察も大事ですけど、その辺の感性は忘れたくないですね。
なお、生存戦略は{netabare}他人の為に命をかけること{/netabare}だと思います。
以下が重要な考察ポイントというか前提だと思います。銀河鉄道の夜にサソリの話があります。
一応書いておくと、小虫を食べて生きていた蠍が、ある日イタチに襲われます。懸命に逃げますが井戸に落ちてしまいます。それで死にそうになった蠍は、自分は沢山の命を奪って生きてきた。溺れて死ぬならイタチに食べられば、イタチがもう1日生きられるのに。この次生まれたら他人の為に命を使って欲しいと神に祈ります。蠍は燃えて天に昇ってみんなを照らすようになった、という話です。
銀河鉄道の夜のカンパネルラの行動と重なる重要な部分です。
リンゴが象徴する原罪の元となるエデンの樹の実が成っているのは、善悪の樹でもう一つが生命の樹です。
善悪は白黒=ペンギン、クマ、ウサギ(黒2匹)などのメタファでしょう。また、白黒は陰陽で循環の表しているのでしょう。
りんごは、銀河鉄道の夜の中では「消えてしまうもの」と同時に生きるために必要なものということだと思います。また、死者から生者へ受け継がれるものです。糧=命=富は死ねば消えてしまう。だったら次の世代にちゃんと受け渡してあげるべき=分け与えるべきだと読み取れます。ここは鳥を取る男の話にもつながりますが、生命を奪って生きる業、そして他人のために生命をつなぐものでもあります。
この蠍の炎とリンゴで大きな主題はわかります。蠍の心臓=リンゴになっています。なお、この両方の話はタイタニックの沈没で死んだ子供たちの話です。他人を押しのけて生きるくらいなら、みんなで神のもとに行こうとします。ただ、従容と死んだわけでなく最後まで生きようとします。
銀河鉄道の夜の今のバージョンの「9ジョバンニの切符」だけでも読んでおくと、理解が深まると思います。
以前のレビューはちょっと冗長で的外れな部分もあるので消します。