薄雪草 さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
お祭り、てんこ盛り。
本作の舞台になった長野県上田市は、智将・真田幸村(真田信繁)で名を馳せる天下分け目の戦国要衝地。
わずかな手勢で強大な徳川勢力に抗いつつ、他方、その軍門にも生きる計略を練り上げた先見の効く戦略には驚くばかりです。
本作は、そんな歴史に根ざした陣内家のひと夏を「サマーウォーズ」と銘打ち、インターネットの仮想世界が、リアル世界へ及ぼすまさかの危機に敢然と立ち向かった、ハチャメチャてんこ盛りなハプニングを、重ねに重ねたエンターテイメントです。
もとはと言えば、憧れの夏希先輩からのひょんな依頼ごとから始まった、天才肌だけどウブすぎる健二くんの、たった数日のバーチャル・ラブパフォーマンス、のはずでした。
ところが、どういうわけだかふたを開ければ、急転直下の世界の危機。
栄おばあちゃんの一声もあって、こぞって一族郎党が、持ちうる知略・計略を縦横に駆使し、寛容と包容とを示しながら、結束と団結に信念を置き、ついにAIの暴走、大国の権謀術数を打ち破ります。
とは言っても、その手合いは、いかにも真田家家臣の末裔らしい一計・奇計のオンパレード。
持ち寄るアイディアも "どうしてそんなものが!" から "どうするのこんなので?" と、ピンからキリまで取り混ぜた硬軟自在のアラカルト。
なかでも、陣内家伝来の攻略ゲームでもある花札(こいこい)で挑んだ夏希先輩の "勝負勘" と、国際数学オリンピックの出場にも敵う能力のある健二くんの "暗算' という、マニュアル感あふれるマニアックさが痛快です。
OZ世界の住人1億超のアカウントを俎上においた押しつ引きつの大博打。
どちらに転ぶか分からないスピーディーな攻防が、ドキドキハラハラの昂揚感と疾走感で、ハイエンドなゾーンへと誘っていくのです。
「よろしくおねがいしま~す!!」
健二くんの悲愴めいた最後の啓上。
ぐんぐん落下する「あらわし」と、ドバドバ噴きあがる温泉とを強烈鮮明に対比させることで、恋愛気分に奥手すぎる二人の情感が、どうにかゆるゆるぬくもっていくステキな大団円へと導いていきます。
それにしても・・・恋のトビラを開かせるこの気配は・・・。
信州最古の温泉といわれる、上田市の別所温泉。
別所温泉駅の西にある「北向観音・常楽寺」の境内には、恋愛を成就させるパワーを授けてくださる「愛染明王」、縁結びの木「愛染カツラ」(=あいぜんかつら)、夫婦円満の木「夫婦杉」があります。
また、縁結びにご利益のある「別所神社」(常楽寺東側)。
好きあう二人が手を離さずに渡るなら "恋も叶う" 「愛染橋」(同駅近くの湯川にかかる橋。「西行の戻り橋」の名称も)。
家庭円満・子宝の神ともいわれる "微笑みあう「夫婦道祖神」"(野倉)。
いやはや、生るべくして成るにいたる "恋愛フラグ" が、最初から満載だったというわけですね。
上田、真田、細田が三つ巴になった「田族」からのメッセージ。
毎夏の定番として "日本のコミュニティーの持つ智慧の柔軟さ" を、再認識できる "逸品" でした。