蒼い✨️ さんの感想・評価
2.6
物語 : 1.5
作画 : 4.0
声優 : 2.0
音楽 : 4.0
キャラ : 1.5
状態:観終わった
原作が気の毒。
【概要】
アニメーション制作:シャフト
2017年8月18日に公開された劇場アニメ。
原作は、タモリがストーリーテラーを務めたオムニバステレビドラマ『if もしも』
の第13回のエピソードで1993年8月26日に放送された岩井俊二監督の実写ドラマ。
総監督は、新房昭之。
監督は、武内宣之。
【あらすじ】
海辺の茂下(もしも)町。夏休み中の8月1日の登校日。
その晩には茂下神社で夏祭りと花火大会が開催される。
快晴の通学風景のなかで海の浅瀬でガラス玉を拾う少女がいた、
中学一年生の島田典道は、同級生のその美少女・及川なずなが密かに気になっていた。
教室内でぼんやり彼女を視界に入れていた典道は、同じクラスの男子・安曇祐介に、
「なずな可愛いよな」「つうか、告りてえんだけど」
と、くだけた口調で打ち明けられた。
その後、掃除当番でプール掃除に行った典道と祐介の二人。
プールには先客の水着姿のなずながいた。
賭け水泳をする典道と祐介だったが、なずなも参加して3人は50メートルプールで競争。
勝った祐介は、なずなに花火大会を一緒に観に行こうと誘われた。
そして、教室に戻ると男子3人が「花火は横から見たら丸いのか?平べったいのか?」
の話題で盛り上がっていて、会話に加わった典道と祐介を含めた男子5人で灯台に行って、
打ち上げ花火を真横から見て確認しに行く約束をした。そして帰宅。
父親を亡くしていたなずなは、母親が新しく別の男をひっ捕まえて再婚が決まっている、
そして自分も親たちの都合につきあって転校しなければならないことに不機嫌だった。
一方で祐介は、典道の家で一緒にテレビゲームで遊んでいた。
なずなを相手にすることに臆病になったのか?男の付き合いでサボる口実が出来て安堵したのか?
自分はなずなとの約束を完全にすっぽかすつもりでいるのを典道に言う祐介なのだった。
プールでの勝負で足を怪我していた典道は、祐介の紹介で彼の父親の病院で診てもらうことになり、
典道は、約束どおりに祐介を迎えに来ていた浴衣姿のなずなと病院で会い、
治療を終えた典道は伝言を頼まれていて、祐介は来ないことを代わりに彼女に告げたのだった。
病院を出て歩きながら話す典道となずな。
スーツケースを持っていて実は家出をしてきたと典道に言うなずな。
彼女は、プールでの勝負に勝ったほうを花火に誘うつもりだった、
典道が勝つと思っていたことを告白するのだった。
結局、なずなは母親に見つかり捕まって引きずられて、典道に助けを求めるのだが、
なずなと母親が去っていくのを為すすべもなく見ている典道なのだった。
その母娘の修羅場を目撃した、祐介たち花火を見に行く男子4人。
笑ってる態度にむかついた典道は、祐介に馬乗りになって殴りかかるのだった。
「もしも、あの時プールで怪我せずに自分が勝っていたら?」と思いながら、
なずなが海で拾って、ついさっき落としたガラス玉を典道が投げつけると、時間が巻き戻った。
異なる世界線のプールでの競争に勝った典道は、なずなに花火大会見物を誘われたのだった。
【感想】
アニメのついでに実写の方も観てみました。
主人公の島田典道を演じるのは『あっぱれさんま大先生』に8年間出演していた山崎裕太で、
当時中学1年生。ヒロインの及川なずな役の女優・奥菜恵は中学2年生。
このふたりが実写では小学6年生を演じています。
週刊少年ジャンプとスーパーファミコンが大好きで勉強に興味なく友達と遊んでばかりの、
声変わり前のありふれたガキンチョな小学6年生な典道が、
皆より一足早く少女に成長してしまったものの心が身体に追いついていない、
なずなの背伸びや両親への小さな反抗にドキドキしながら付き合わされる話。
子どもには子どもの世界があり、おとなになって同じことをやっていたらバカだと思われる、
半ズボンの男子どもの子どもであるが故の無邪気な身勝手さにノスタルジーを感じつつ、
そこに小6設定にしては背が高く大人びた奥菜恵演じる少女の姿との対比を見せながら、
恋と呼ぶには感情が幼いふたりの一夜限りの小さな冒険を描いた情緒的な作品でしたかな。
それをアニメでリメイク!「君の名は。」と同じ川村元気プロデューサーで制作担当はシャフト。
「化物語」「魔法少女まどかマギカ」など数々の人気作品の実績を評価されてのことでしょうが、
シャフトのアニメ演出はネタを仕込みまくった動く紙芝居が基本路線で、
アニメーションが一般層に再評価されるきっかけになった作品の監督である、
新海誠的なものとは正反対ですね。
原作の空気感を再現したいならバッチリ実写でリメイクすれば良いことなのですが、
ここは敢えて実写に寄せたりせずにシャフトにしか作れないアニメ表現が期待されたのでしょうか?
しかしながら、実際に出てきたアニメは好きではないですね。
原作から変更した主人公の典道の登場シーンではトイレでウ○コの真っ最中で、
更にはトイレの扉越しにカレーの話を母親としだすという。
こういうのを面白いと思ってやっているのでしょうかね?
典道ら子供たち全員を小6→中1に設定を変更したせいで、
甲高い声の半ズボン男子共の子ども特有の稚気ゆえの大人をからかうなどの行動が、
野太い声のイキった学ラン中学生の幼稚で下品なセクハラに。
あの世代の子どもにしか出せない輝きを映像であらわした原作ドラマと趣が変わってしまいましたね。
あの年代の一学年の違いは大きいです。
演技上の都合で年齢設定を変えたということですが、
菅田将暉に広瀬すずと人気俳優を典道となずなに使いたいがために、
演技をキャラに合わせるのでなくて演者の都合にキャラを合わせるということに。
結果的に特に菅田将暉の声が実写とは逆に野太く、背の低い中1少年に合ってないですね。
ぽよよんろっく(渡辺明夫)氏のアニオタ向けの媚びたキャラデザ。
ヒロインなずなは、「化物語」の戦場ヶ原ひたぎにキャラデザも服装も酷似。
公立校である設定のはずの女子制服のスカートが妙にフリフリなスリット構造で視線を誘導している。
男子も、典道と祐介が普通のガキンチョだった原作ドラマと比べて祐介の見た目が無駄にイケメン化?
評価されている過去の原作ドラマ&人気アニメ会社&人気俳優と、
大人の都合で人気要素を寄せ集めた結果、深夜アニメそのままのやり方で作ってしまいました?
良くも悪くも子どもたちの直情的な純粋さを扱っていた原作ドラマと比べて、
やたらローアングルや胸元重視でなずなを性的に描くわで媚びた画作りが鼻につきます。
そこは思春期?の典道の目線で性への目覚めを意識して、
「なずな、エロかった!」と視聴者に満足して欲しかったのでしょうか?
また、分岐するストーリーのどちらを選んでも成就しない典道の恋心が切ない原作と比較して、
このアニメではバッドエンドを迎えるたびにタイムリープして典道に都合の良い世界に改変して、
リープを繰り返すたびにヒロインなずなも男の妄想の産物のような媚びた存在にどんどんなっていき、
ついには電車の中で松田聖子の『瑠璃色の地球』を歌い出すという、この映画のハイライトシーンに。
おとなになる前の少年少女の素材を活かしたのが原作の実写ドラマであるならば、大人の事情で、
深夜アニメら創作の人気要素や俳優起用などトッピングをごてごてとしまくった厚化粧がアニメ版。
シンプルな構成の原作ドラマから、アニメ的な演出の映像と音楽で二倍の長さに引き伸ばしています。
ひたすら男性目線に媚びまくったアレンジの数々が、
ターゲットを絞ったオタク向けの深夜アニメとして作られたのならともかく、
約300スクリーンで一般層向けを狙ったにしてはTPO(時と所と場合)を弁えた作りになっていなく、
やってることはいつもどおり普段着のシャフトですが芝居でキャラの魅力を引き出すでもなく、
背景を利用した虚飾たっぷりの演出のやり方が今回は原作ドラマとの相性が悪すぎたのかな。
ネットでは酷評が多いアニメ映画ですが、映像で伝えていることが変わってしまったためか、
これを見ずに1993年の原作ドラマを見たほうが良いと言われるのも当然かな?と思いました。
物語シリーズが好きでいつもどおりのシャフト作画と音楽が楽しめればいい!
という割り切りが出来ていて原作ドラマとの差異を気にしない人ならば、
それなりには楽しめるとは思いますけどね。
これにて、感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。