tot さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
初期P.A.WORKSの隠れた名作!
初期P.A.WORKSの佳作
大作ともいえる凪のあすからの直後に発表された、P.A.WORKSの佳作といっていいと思う。全篇の細部が丁寧に丁寧に作り込まれている。主人公の透子が作り出すガラス細工のように。
思春期の少年と少女の淡く移ろう恋の感情が、舞台となる海辺の街の光景を背景に一つ一つ描き出されていく。主人公の恋の対象はtrue tearsのサブヒロインと同様に、やや人とは違った世界の見え方をしていて、いわばガラスによって光線が屈折されたような世界を持っている。
未来のカケラと呼ばれるその世界を共有してしまったことから主人公格の二人は惹かれあい、ともにその謎を解明していくことになる。その過程がプロットをなしている。恋のために生じるすれ違いも、対象がすれ違うことで生じる恋の不成立も、物語として消費されるのではなく、人物達の一人一人を魅力的に立ち上げていく。
冒頭の始まりがやや唐突に見えたり、幸が読んでいる文学作品の題名やテーマが微妙に象徴になっていたり、物語としてわかりにくさを残すために低評価のレビューが多いのだと思われるが、一つ一つ描かれていることを丹念に追っていけば、その辺りも明快で丁寧。
隠れた名作です。