ウェスタンガール さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
Slow Death
夏真っ盛りである。
そんな時に限ってエアコンが壊れる。
蛍光灯が切れる。
水道のポタポタが止まらない。
ソニータイマーが発動したのだろうか、パソコンがブルースクリーンと再起動を繰り返す…。
目を外に転じれば、アスファルトの舗装はガタガタ、商店街はシャッターの合間に点々、年寄りのサバイバルは、日々過酷さを増してゆく。
我々はエントロピーの増大に抗う術を失いつつある。
かつては、無条件に長時間の激務を担うサラリーマンである夫と、同じく家庭内での家事、育児、介護を担当する妻がいた。
それは家庭と社会の物質的なインフラを更新し続けるエンジンであった。
今、それらがゆっくりと崩れつつある。
男女機会均等云々を例示するまでもなく、暗黙の役割分担であるサザエさん的家庭は絶滅の危機に瀕し、人口減少が、そして気候変動が、物質文明という幻想、その崩壊に拍車をかける。
しかし我々は慌てず、騒がず、悲嘆もしない。
育んできた、豊かな妄想力がある。密かな愉しみを守り通すべく、注ぎ込むエネルギーさえ残っているなら、何も怖いことは無い。
そう、妖精さんがいる限り、我々のターミナルケアは盤石なのだ。
彼らは、我々人類の内なる欲求の具現化、緩やかな死を看取ってくれる存在なのだ、きっと。