「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編(アニメ映画)」

総合得点
85.0
感想・評価
581
棚に入れた
2490
ランキング
258
★★★★★ 4.1 (581)
物語
3.9
作画
4.4
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.0

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

批評でなくて感想です。

【概要】

アニメーション制作:ufotable
2020年10月16日に公開された117分間の劇場版アニメ。
原作は、『週刊少年ジャンプ』に連載されていた吾峠呼世晴による漫画作品。

監督は外崎春雄。

【あらすじ】

大正時代、家族で山暮らしをしていた少年・竈門炭治郎は母親弟妹を惨殺されて、
唯一の生き残りの肉親である妹・禰豆子は人から鬼へと変貌していた。
そこに現れ刀を向けて鬼の禰豆子を殺そうとした鬼殺隊の隊士・冨岡義勇ではあったが、
妹を庇う炭治郎、鬼となっても兄を守ろうととする禰豆子の兄妹の絆が義勇の心を動かし、
その義勇から禰豆子を殺さない代わりに鬼殺隊士として生きる道を炭治郎は示された。

禰豆子を人間に戻す。殺された家族の仇を探して復讐をする。
それらを目的に炭治郎は「育手」である鱗滝左近次のもとで修行をし、
数年後には鬼を倒して命がけの最終試験を合格して鬼の妹・禰豆子を連れた鬼殺隊士となっていた。

鬼殺隊士になって初の鬼狩りを終えた炭治郎は浅草で、
家族の仇で鬼たちの黒幕である鬼舞辻󠄀無惨に遭遇するも手出しができなかった。

その後、炭治郎は無惨との因縁がある珠世と、
その助手である愈史郎に出会い協力関係になったり、

鼓屋敷や那田蜘蛛山での鬼たちとの死闘で炭治郎は、
同期の隊士である我妻善逸、嘴平伊之助らと仲間になるのだった。

戦いで重傷を負った炭治郎たち3人は、蝶屋敷で療養と修業をして、
そこで炭治郎は同期の女剣士・栗花落カナヲと心を通わせたりしたのだった。

鬼は殺すのが原則の鬼殺隊であるので、鬼の禰豆子の処遇と兄・炭治郎の責任を巡って、
「柱合裁判」があったりしたが、それも罪に問われること無く炭治郎たちに次なる司令が下る。

短期間に40人以上の行方不明者を出した「無限列車」これは鬼の仕業と推測している。
夜に出発する「無限列車」に乗り込んだ炭治郎たち一行は、鬼殺隊でも並外れた強さを持つ、
炎柱の煉獄杏寿郎と合流をし、行方不明事件の原因と思われる鬼に立ち向かうのだった。

【感想】

2020年12月1日の映画の日(全国一律1000円で入場できる)に観に行きました。
公開から一月半も経過すればさすがに空席が殆どでした。家族連れが数組入っていたことから、
興行収入が高い映画はファミリー単位の入場を当て込んだ鉄則の結果だと推測できますね。
ただ、普段映画に興味なかったり作品のファンでもない人も来るので、
マナーが悪い客との遭遇率が若干上がるかも?
自分の場合は映画序盤で二分間ほど紙袋をくしゃくしゃ丸める音をたて続ける騒音老爺がいて、
孫につきあって観に来たのかな?作品に興味なくて暇だったのかな?と色々と想像してしまいます。

さて、これは興行収入403.2億円と日本歴代興行収入で「千と千尋の神隠し」を抜いて圧倒的首位と、
さぞかし凄い作品なんだろうかな?と思ってみると、ちょっと肩透かしかもしれません。
TVシリーズの続きで、まさに第27話~第31?話な感覚で原作をそのまま映画化していて、
それまでの話を予習していることが前提であって独立した単体の内容としては弱いですね。

鬼滅の刃がどういうアニメかと言うとキャラやストーリーなど原作の内容を全く弄らないですし、
アニメ独自の解釈を入れない。原作を最大限に尊重してクリエイターとしての承認欲求は、
ufotable基準で最高レベルの映像で原作再現することに全振り。
これは原作者から見たらありがたい制作スタンスかも。

従来のヒット作品には“名監督”“巨匠”と呼ばれるクセが強い人物がいて、
原作を跡形もなくぶっ壊して自分の絵柄でアニメを作ったり、
やたら個人の思いでクセが強いアートなアニメを作ったり、
内容が難解であったり演出が奇抜だったりで、
それらの質アニメがマニアに尊ばれ、アニメ監督個人への偶像崇拝に繋がっている。

アニメのタイトルや主人公らの名前よりも、
スーパースター監督の名前が突出して目立つ風潮がありましたね。

逆に鬼滅の監督の外崎春雄さんの名前は、それほど目立っていませんね。作家性は原作に任せて、
演出家は技術者として完全に割り切った作り方であるのが関係あるかもです。

また、本職の声優よりも実写の俳優・女優・テレビタレントを優先して起用して、
ワイドショーなどでそのタレントたちに宣伝させるやり方が、
大ヒットアニメ映画をを成立させる定番の手法になっていたり、
そういった業界の風潮を打ち破って従来のTVアニメの理屈で作られていますね。

声優の起用法をはじめ、芸能界や広告代理店の都合とは逆のスタンスで客を喜ばせるために作られた、
その「鬼滅の刃」が天井を吹き飛ばしたのが面白いですね。

それは、新海誠監督でも、やらなかった出来なかったことです。

喜んでくれるファンがいて、そのファンの満足に合わせてアニメを作って売っている、
このシンプルなWin-Winの関係が、
「千と千尋の神隠し」を20年ぶりに抜き去ったという事実は快挙であるとは思います。

世の中にはこだわりにこだわって作られた芸術的な素晴らしいアニメがあるのを知っていますし、
個人的には贔屓にしているアニメ監督さんが数名いますし、
鬼滅より面白いだろ!と思えるアニメが多数あるとも思っているので、
私自身が酷い二枚舌ですけどね。

まあ、能書きはこれぐらいにして、これは映画作品としては映像と音楽は素晴らしいですし、
アニメーションとしては技術的には高いレベルでまとまっているとは思います。

ただ、面白いか?というとTV版でも劇場版でもつまらなくはないが好きというレベルでもないような。

ジャンプのバトル漫画ってキャラ人気がまずあって、人気キャラの活躍で読者を引っ張っていく。
それが「SLAM DUNK」の花道や流川や三井であったり、
「幽遊白書」の幽助や蔵馬や飛影であったりする。

それが鬼滅では推しキャラが出来なかったですね。
人気キャラの善逸は寝てるときだけはカッコイイけど、
起きてるときはほぼ情けないギャグ顔。伊之助は素顔はイケメンだけど性格が単純すぎますし。
ファンがキャラに愛おしさや楽しさを感じる部分が、
自分には全く合わなかったりギャグが全く笑えなかったり、
これは原作者の作家性が単純に自分には合わないというだけの話ですけどね。

感動的な映像でエモを刺激するシーンであるはずの複数の仕掛けが、
例えば回想シーンの煉獄さんの母君の台詞が、既視感ありまくりでわざとらしく感じたりで、
死期を悟った母親と子供の感動的であるはずの話が単純には自分には嵌らなかったりです。
鬼滅の刃は元々、台詞が説明的過ぎる。何でも口で説明してしまうので、
余韻(言外の余情)が薄くなるのが脚本の構造的な欠陥に思えてしまいます。

それは某TVアニメの第10話など台詞回しや間のとり方や映像の感情芝居で、
言葉にならない思いを見せてきた、情緒面で上位互換な作品を今まで何度も見てきたがゆえに、
比較して泣くまでには至らなかったという単純な話ですね。
ちょうど、某号泣劇場アニメの記憶が新しいときに観たということで、
単純にタイミングが悪かったと言えますが。

戦闘シーンであれ泣くシーンであれ、
いろんな要素を詰め合わせた全部乗せラーメンみたいなのが鬼滅なのですが、
ジャンプアニメとしては高いレベルで卒なくまとまっているものの、
個別の要素ではあの作品の方が良くない?
と思いながら観てしまったのが正直なところですね。

ジャンプアニメでの重要ポイントである戦闘シーンでワクワクが味わえる場面があったり、
戦いが終わったあとで残された者たちが悔しさを滲ませる場面は良かったと思います。
カラスまで泣くのは滑っていますけどね。

やはり人気作品としてのクオリティが技術的に保証されているものの、
ジャンプ愛読者がご馳走と味わえるものが自分には好物でなかったり、
今まで見てきたものや感性の違いなんでしょうかね。
社会現象とも言える超ヒットに同調するまでには至りませんでした。

どの作品が上とか下とかいう話ではなくて、週刊少年ジャンプを卒業してしまっている自分と、
ジャンプ愛読者との価値観の違いが評価の根本的なズレを生んでしまったのかな?
と、しょうもないことを考えてしまった次第でした。


これにて、感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2021/08/02
閲覧 : 351
サンキュー:

43

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