「憂国のモリアーティ(2クール目)(TVアニメ動画)」

総合得点
72.2
感想・評価
166
棚に入れた
755
ランキング
1192
★★★★☆ 3.6 (166)
物語
3.7
作画
3.7
声優
3.7
音楽
3.5
キャラ
3.7

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ネタバレ

cubemania さんの感想・評価

★★★★☆ 3.2
物語 : 4.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

軸が変遷しているのかしていないのか

原作未読。ホームズも詳しくない。1、2クール総合評価。

いまひとつ物語の軸がはっきりしないように思う。{netabare}初回はクライムコンサルタントとして教唆にとどめるのかと思っていた。身分の高い人間が惨殺で証拠もありでどう処理したのだろうと思っていたが、それ以降は共同正犯で完全犯罪となり、ファミリーが累が及ばないようにするのかなと思った。

だが、2クールにはいると1クールでは二つの貴族絡みの事件からホームズにしか共通の犯人と気づかれていなかったのに、犯罪狂と社会に知られる存在になっている。そこまでの事件などがあるのだろうし、時間の経過で状況も変化しているのかもしれないが、ちょっと急すぎるというか、説明に乏しい。

そして、兄のアルバートが正体を上司のホームズ兄に明らかにしたりするのだが、ホームズに関しても紳士協定を守らなければ正体を暴露してしまうようなリスクを犯しだす。頭脳明晰なホームズが兄の部下のつながりに気づかないのも不自然すぎる。よくわからない犯罪による社会の変革の一環なのかもしれないが、何とも何を軸に動いているのかよくわからない。

初回で被害者遺族に同情し、貴族の殺人に憤慨しながら、船上の事件では金で雇った平民を犠牲者になるように仕向けている。自分たちの目的のためなら、平民に犠牲者を意図的にだすことも厭わないのかと思ったら、娼婦の連続殺人には憤慨し、事件の解決に乗り出す。自分たちの意図での犠牲者は肯定で他者による犠牲者は許せないのだろうか。何ともどういう軸で動いているのか理解に苦しむ。

わからないのが18話「ロンドンの証人」でどういう意図でのこのエピソードなのかよくわからない。そこまでは各話は流れやある程度の必然性が感じられるのだが、ここでは突然孤児院時代の訴訟の話となっている。ミルヴァートンがウィリアムの調査していて、孤児院時代の訴訟から聡明さ、貴族への嫌悪などからウィリアムが背乗りと気づかせる一因ともとれるが、決定打というわけでもないし、このエピソードがなくとも火事での児童一人を含む一家死亡で背乗りへの確信には十分だといえる。

訴訟の中心となる「ヴェニスの証人」は大昔に読んだきりなので、あまり覚えていないが、あの解釈で裁判官が納得するには無理があるし、契約違反で全財産というは取り決めもないようだし、無理だろう。なぜ訴訟のエピソードなのかと思うが、元ネタの金貸しのシャイロックは当時のヨーロッパのユダヤ人観とされるが、孤児院と貴族があんな契約をしていたのも変だが、その悪役をわざわざ踏襲するというのはウィリアムたちがユダヤ人で階級打倒の遠因ということなのだろうか。シャイロックは肉を切り取ろうとして罪に問われるが、ウィリアムが罪に問われないのはその特別さを暗示しているのか(年齢から罰されないともいえるが)、いずれ罰される運命にあるということなのか。

日本の創作においてもイスラムとユダヤに触れるのは御法度なので、ユダヤ人ということを匂わせてるに留めているともとれるのだが、そもそも貴族になった人間が昔孤児だったからというのは一連の事件の動機としては弱すぎる。頭脳明晰ならなおさらで何とも論として説得力に欠ける。

結局のところ、軸がはっきりしないようにみえるのも動機がよくわからないということに帰着するのかもしれない。人間だから考えが変化していくということはありうるが、単独犯ではないし、集団でこれでは結束を維持するのは難しいだろう。

原作は連載中なのに終了させるためか、終盤はホームズ「最後の事件」にあわせるためか、直接手を下さなかったウィリアムが急に大衆の前に姿を晒し、実行犯で大活躍となり、視聴者はとまどってしまう。ミルヴァートン邸での軍団での戦いもあまりの突然さに興ざめというか。最後にいたっては物理法則無視でどうやって助けたのかと思うが、スイスで再会も元ネタにあわせたものだろうが、アニメ版のスタッフの実力のなさを露呈しているようで呆れる。終盤は退屈さに寝てしまった。連載中なのに無理やり終わらせる必要があったのだろうか。アルバートの罪は不明だし、他の連中は罪を問われておらず、全員証拠なしで無罪、不起訴なのか。ファンタジーすぎるだろう、さすがに。

時間の扱いもいろいろ気になった。火事での背乗りはイートン校に入る前というから、日本でいえば小学校高学年くらいだが、イギリスは発音アクセントで出身がわかるという社会だが、あの年齢でパブリックスクールにいれたところでクィーンズ・イングリッシュが身につくものだろうか。プレップスクール前ならと思うが、それならさすがに養子前に万巻の書を読んだということにならないだろうか。それにさすがにそこまでには貴族などに相当顔が割れているだろう。かなり重要な設定だけに気になった。

また、裁判に関してもミルヴァートンの調査を確認していることから裁判所経由での判決書の入手だと思われるが、日本だと民事の訴訟記録はだいたい保管期間が5年だが、劇中では少なくとも10年以上前のようだが、破棄されていないとは考えにくい。そもそも下級審とはいえ、あんな事件であんな判決なら知名度がありすぎて、いろいろ不利益だろう。

個別のエピソードは楽しめるのだが、統合するところがよくわからないし、終盤の無理な幕引きのためかの展開はかなりひどい。そういう意味では残念な気がする。 {/netabare}

投稿 : 2021/07/28
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サンキュー:

3

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