テナ さんの感想・評価

3.9
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態：観終わった

2人だけの時間

3分間時間を止める事が出来たら何をするだろうか？
3分って短い時間ですが、止められる時間が3分となると凄く莫大な時間で、3分で出来る事って沢山あります。

時間停止能力がある森谷さんは、人とのコミュニケーションが苦手で、クラスメイトから話しかけられたら時間を停止してしまう女の子。
彼女は逃げ出した先で、同じクラスで美人な女の子の村上さんのスカートをめくる。

少年誌のお色気シーンみたいな事をする子だなぁ〜と思っていましたw
ですが、村上さんの時間だけは止められず本人にバレてしまう。
スカートをめくった行為を他言しない様にする代わりに、お願いをなんでも聞いて欲しいと言われます。

それから2人は時を止めて2人だけの時間を過ごす事になる。
そんな中で、森谷さんは村上さんとデートをする事になります。
他人との距離を取って人から距離を取り続けた彼女にとって、村上さんとのデートは新鮮で楽しい時間だった。

だから、でしょうか？
彼女の3分間を止める力が半暴走状態になる。
それは、ヤキモチ……村上さんが他の女子と楽しそうに話している姿に無意識に3分間の時間を止める……そうすれば、気になった村上さんが心配して自分の元に来てくれるから……


そもそも、森谷さんは何故に人と仲良くしないのか……それは陰口。
世の中には平気で嘘をつく人がいます。
表では仲良くて大好きな振りをして、裏では陰口を叩くし実は嫌いだとか言う。
自分を偽っている人もいると思います。

そう思うのは人間だし仕方ないって思います。
誰だって陰口は叩く事はあるし、100の人間から1人の人間が全員から好かれるだなんて絶対にないのですから……それは少し寂しい事だとは思いますけど……

でも、それを本人が聞いたらどう思うでしょうか？
おそらく、彼女はそれを昔経験したのでしょう……だから、人と接するのが嫌になり逃げだした。

彼女の3分間停止能力って何故芽生えたのだろう？
その答えは明かされていません。
ですが、多分、この能力は森谷さんが自己防衛をしたい気持ちから無意識に生まれた能力かな？って感じました。

一方、村上さんは、逆で友達も多く彼氏も居るし余り使いたくない言葉ですが、リア充です。
実は、私はこのリア充って凄く大嫌いな言葉なのです。
周りから、そう見えても、そう見える為に努力をしてるからですよね。
何もしてない人が、そのポジションに立てる訳がないのです。

それを、自分の物差しでリア充って言葉で簡単に片付けちゃう……それが私はあまり好きになれなくてw

作中の村上さんはクラスメイトや周りの人の事を調べてました。
彼女も、そのポジションに立つまでに努力をした1人でしょう。

どうしたら喜んでくれるか？
どうしたら好いてくれるか？
どうしたら一緒にいてくれるか？

確かに、彼女の生き方は上手いと思います。
誰かの望みを聞いて、答えて、喜ばせて……
でも、そんなのはいつまでも続かないのです……そうした結果彼女は、あらぬ噂を立てられてしまいます。

先生と出来ている、人に媚びている、皆にいい顔している、などなどです。
全員によく思われようとする時点でそうはなるなぁ〜とは思います……
でも、そんな事を続けたら心が疲れちゃうし壊れちゃう…………

1番、解りやすいのが村上さんが彼氏の浮気現場を目撃したセリフです。

｢早く言ってくれれば良かったのに｣

｢別に大好きって訳じゃなくて向こうが付き合ってくれと言ってきただけだし。｣

痩せ我慢にも感じますが、作品を最後まで見たら、セリフの意味に気づきます。

早く言ってくれたら、ってのは怒らないし直ぐに別れるのに、何故なら、それが今の彼が望む事だから……

別に大好きって訳じゃない、最初から好きではないし、向こうが付き合いたいと言うから……
これだって、相手の気持ちを優先したからこそ付き合っただけで、村上さんは自分の好意はなかったのでしょうね。

これが、皆から好かれる為の彼女の選んできた考え方。

だから、村上さんの心は壊れていた。
何も無くなっていた。
自分が……村上さんが何をしたいのか、自分の事が解らなくなっていたのです……

だから、森谷さんに力を止めて貰い、その時間を服を脱いでみたり、クラスメイトのノートや私物に落書きしたり……これは悪意ではなく……本当に自分が何をしたいかが解らないから……色々と試したのかもしれません。
自分を探す為の。

そんな2人は大切な時間を共有して少しづつ関係性を築いていく。
でも、少し能力に変化が起き始める。
時間停止の効果時間が薄れて行ったのです。

実は、この辺りは、村上さんと接して来た事もあり森谷さんは少しづつクラスに打ち解けてゆくのです。
何故、力が薄れたのか……それは森谷さんが少しづつ時間停止する必要がなくなってき始めたから……それは森谷さんが人と接する事に踏み出し始めたから。

で、村上さんに森谷さんが能力の話をしようとしたら村上さんは逃げ出します。
耳を塞いで……それはきっと……誤解したのかもしれません。

森谷さんが村上さんを拒絶しようとしていると思い込んだからこそ耳を塞いだ……逃げ出した。
でも、実は内容は能力の事で少し安心したのかな？って思いました。

村上さんの家で村上さんは自分の秘密を暴露します。
そこには1人1人の名前とプロフィールの書かれた単語帳。
その1つの内の1人の名前……森谷さん。

村上さんさんの森谷さんのイメージ

優しく話かけてくれたら、直ぐ好きになる
優しくしてくれたら誰でもいい
それが女の子同士ならなおいい
相手は誰だっていい

多分、村上さんは試したのでしょう。
森谷さんに知ってもらう事で……
優しくしてくれたら、それでいいのでしょう？
それが村上さんじゃなくても良かったんだよね？
誰でもよくて、今たまたまいるのが村上さんなんだよね？って……気持ちを確認したかったのかなって。

森谷さんの答えは……
まさの展開でした。
後日、森谷さんは3分間の能力をクラスメイトに暴露する。
それは村上さんとの2人だけの時間が2人だけじゃなくなるのを意味する。
それに、その時間が自分達の時間じゃなくなる事に恐怖した村上さんは逃げ出す……

それでも、森谷さんは話す事をやめない
でも、この言い合いには村上さんがやっと本心で話してくれた気がする。
森谷さんも、よくぶつかったなぁ〜って思います。
本当に村上さんを大切に思うから出来た事ですよね。

だから勇気を出せた森谷さんと。
自分の本当の気持ちとやりたい事に気づけた村上さん

そして、3分間の能力は失われた。
それは、もぅ必要のない力だから……
人は誰だって傷つけて傷ついて、助けられ助けて、救って救われて、喜んで喜ばせて、笑って笑わされて、そうして不器用に関係を紡いでいく。

森谷さんも村上さんも、それを知れたから。

最後に作品全体を。
森谷さんと村上さんの気持ちの変化や考えの変化を作中によく散りばめられている作品で、最後まで見て、あの時のセリフやあの仕草の意味などに納得が行く造りになっている気がします。
EDが誰もが知る名曲が使われていて凄く心にフィットしますね。