「電脳コイル(TVアニメ動画)」

総合得点
83.9
感想・評価
1969
棚に入れた
11179
ランキング
308
★★★★☆ 3.9 (1969)
物語
4.2
作画
3.9
声優
3.7
音楽
3.8
キャラ
3.8

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waon.n さんの感想・評価

★★★★★ 4.8
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.5 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

触れられるもの、られぬもの。感じられるもの、

【First impression】

 子供向けの皮を被っているが、実は大人向けっていう巧妙に作られた作品で、完全にやられました。良い意味で!

 電脳って聞くと真っ先に思い出されるのが、『攻殻機動隊』いやいや、『ニューロマンサー』だろ? なんてどっぷり浸かっているSF好きには少々違和感満載のこのアニメ。
 というのもネオンキラキラで酸性雨が降りしきるサイバーパンクの雰囲気とはかけ離れた下町の風景がそこには広がっており、どちらかと言えば、懐かしさすら感じられるほどで、全くと言って良いほど未来感はない。
 主役が子供だから? いやいや、多分それだけじゃない、まぁそういう側面もあるかもしれないけれど、どちらかと言えば、テーマ性の帰着がSFにそぐわないからなんだ。でも出てくるデバイスは未来的というような、ちぐはぐさがあるものの、なぜかバランスが取れている。じゃあそれはなぜかって話は後々に。

 この作品、作画も背景もそうだし、脚本も割としっかりとしていたんで、もうね、これ名作でオッケーです。
 でも、あとで冷静になってみるとノスタルジックにやられただけって話になるかもしれません。

【Story synopsis】

 時は202×年フェアラブルメガネが普及している世界。
 子供たちは電脳の世界を映し出すメガネを通じて遊び、ペットを飼い、通話をしたりしている。
 主人公の優子(通称:やさ子)は金沢市から大黒市へと引っ越しをしてきた。
 この大黒市には電脳データの古い建物が多く残っており、それにより、電脳生物イリーガルやメタバグという石が発生していた。
 そういったバグを消すために市の空間管理室という部署が導入したサッチーというバグ修正パッチのようなものが取り締まっている。
 
 やさ子の引っ越しと時をほぼ同じくして、引っ越してきた勇子(通称:いさ子)彼女はある目的を達成するためにでこの町にやってきた。

 二人のゆうこが出会い物語はスタートする。

 やさ子は、いさ子の目的のため、事件に巻き込まれていくのだが、やさ子自身その中で目的を見いだしていく。

 いさ子の目的とは。。。?

【staff】

制作会社
 マッドハウス

監督/原作/脚本
 磯光雄

キャラデザ
 本田雄

総作監
 井上俊之 本田雄 板津匡覧

美術監督
 合六弘
 この方、本当に仕事の幅が広くてスペシャリストって感じがカッコいいっす。

OP/ED
 池田綾子



【Review】

 冒頭で子供向けの皮を被った大人向けという事を書いていますが、じゃあどこが子供向けで、どうして大人向けなのかって話です。


 まず、このアニメは大きく分けて3つの要素でできています。
 ・テーマ
 ・キャラデザ
 ・背景

 んなのどの作品だってそうなんですが、このバランスが非常に良いし、作品を面白いものにしているんですよね。
 一つずつ、掘り下げてみたいと思います。

 まずは、テーマ。
 物語で特筆すべきデバイスなのが間違いなくメガネ。ただのメガネではなくウェアラブルメガネですね。裸眼では見えないものも電脳を通じてみる事ができる。
 つまり、目に見えているものが全てではないというテーマの下敷きとして用意されているのがコイツ。
 このメガネが原因で起こる事件や事故はあくまでも子供目線では大事件だけれど、大人からしたらちょっとした事件であるように物語では調整されている。これは調整されています。
 なので、大きな問題として取り上げはしないけれど、事件をきっかけにメガネを没収し、目に見えないものばかりを追いかけていないで、実際に触れられるものも大事にしなさいというアンチテーゼのような問いかけが作中でなされるのがこの物語の良い所で、中身がしっかりとある作品となっている。
 触った感触、温かさみたいなもの、電脳で感じられるの?
 こういったテーマは大人なら読み取れるだろうし、子供なら感じ取れるだろう。子供でも分かりやすくするために、主人公たちは子供であるし、デンスケは犬だったりするのではないでしょうか。

 二つ目はキャラデザ。
 これが子供向けと思わせる外側の部分ですね。
 頭身が子供向けのアニメって感じですし、線も少なく影などのディティールも細かくない。
 だからこそ、細かい動きを入れることができているんだとは思います。
 プリーツのスカートや女の子たちの髪の毛の揺れ、走りのバリエーション基本がぎっしり詰まった作画の質やレイアウトの情報量の多さはもはや、総作監レベルの人達の経歴を見れば納得です。

 色々書いてますが一番は、デンスケの可愛いさなんだよなぁ。
 本当デンスケや他の電脳ペットの動きとかも可愛いく動いてくれるんですよね。最高です。


 三つ目は背景。

 背景は一貫して、ノスタルジック。
 SF的な未来感は感じられない、むしろそこには懐かしさすらある。
 この作品がそもそも古い、とはいえ2007年なので、作品中の町並みはもしかしたらそれ位だったか? どうだっただろうか、などとお思い巡らせた時点で思惑にハマっているわけで、この部分が刺さるのは大人にしかない。
 そして、彼らのコアタイムは放課後の印象が強い。物語のなかでは夏休みに入っており、当然朝のシーンもあるのだけれど、この夕方の雰囲気が印象に残る。それは自分で経験した放課後を思い出しているから。

 色の使い方から、線を曖昧にすることで、どこか薄れゆく記憶を辿っている景色と重なる。この雰囲気づくりがキャラデザと上手く合っているように思える。


 以上三つの要素をまとめると、大人向けの内容ではあるが、子供も楽しめるものになっている。と思います。


 脚本と構成について。

 構成は良く練られていて、最終的にしっかりとまとまっており、納得のいくエンディングでありつつ、しっかりと感動させられてしまったわけですが、話数単位では若干脚本に違和感が出ないこともない。
 それは、子供目線で、大人にも通じるようにテーマを込めた時、セリフの中にしゃべらせるセリフが出てしまう。そこが自然ではなく、しゃべらされているのが分かってしまうのがよろしくない。
 この点が唯一の気になったところ。


 OPとED

 OPでは作品ないにある、謎やサスペンス要素を意識させるような曲調でしっかりと内容と曲がマッチしていると感じるあたり誠実で良い印象です。
 また、EDにおいては、作品のなかで感じられるノスタルジックな雰囲気がありますね。
 この作品の良い所をちゃんとOPとEDで表現できているあたり良いです。

 池田綾子さんの声がまた魅惑的で曲調とマッチしているんですよね。
 アニメと一緒に聞くからなのかも知れないですが、とても好きな歌となっています。


 デンスケ

 犬ですね、電脳ペット。この存在が主人公のマクガフィンとしてうまーく機能していますね。デンスケがこの物語の軸を作っていると言っても過言ではありません。また、観ている私達に対してあるテーマを投げかけるキーアイテムでもあります。
 デンスケなしではこの物語は成立しなかったでしょう。
 もう可愛いし、こんなペットが飼えるなら電脳メガネ欲しいです。



 まとめ

 物語のテーマとアンチテーゼで深みのある物語、SF的なデバイス、キャラデザと背景、テーマソング。

 色々な要素がうまく融合されまとまっている作品なので、誰がみても楽しめる作品になっていると思います。
 私はめっちゃツボにはまってしまっています。
 まだ、観ていない人は必見ではないでしょうか。

 それでは、よしなに。

投稿 : 2021/07/24
閲覧 : 264
サンキュー:

3

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